第13章 暖かく和やかに
「…そうか」
槇寿郎様も瑠火様も、最初から何を言われるかわかっていた様で、全く驚く様子はなかった。
「この言葉を言うのは些か早過ぎかもしれませんが…どうか言わせて下さい。ナオさん。おめでとうございます。…そしてありがとうございます」
瑠火様はそういうと、私に向かって頭を下げる。
「っそんな!やめて下さい!お礼を言われる様なことではありません!だって1番そうなりたいと望んでいたのは私です!…私ずっと…きっと昔から杏寿郎さんとの赤ちゃんが欲しいって…思っていたんです」
私のその言葉に、隣に座る杏寿郎さんの手がピクリと反応した。
「…鬼の血鬼術で見せられた夢の中で、私は杏寿郎さんの子を身籠っていました。きっと自分でも知らないうちにそうなることを望んでいたんだと思います。…あの鬼は、自分の都合の良い夢を見せる能力を持っていたと後から聞いたので…きっとあの時、そうはならない…なれないことをわかっていたからこそ、私はあんな夢を見せられたんです」
本当は、杏寿郎さんや槇寿郎様の前で、あの日の話なんてしたくはなかった。それでも私の気持ちをわかってもらうには、どうしてもこの話をしなくてはならない。
「だから私、今すごく幸せです。もう嬉しくて嬉しくて跳び上がりたいくらい「っそれはだめだ!腹に子がいるんだ!跳び上がってはならない!」」
私が全部言い終わる前に杏寿郎さんは大声でそう言った。
「あ…いや、今のは言葉の綾で「ナオはしっかりしているようでそそっかしい。俺はいつでも君のことが心配でならないのに、俺の子が腹にいるとわかった今、もし君に何かあったらと思うと気が狂ってしまいそうになる!」
人間とは不思議なもので、自分より慌てていたり、騒いでいる人がそばに居ると自分は冷静になれるものだ。私は杏寿郎さんの目を見つめ
「あのですね杏寿郎さん。病院に行くのもこれからからなんですよ?いつ産まれるかもわからないのに、今からそんなに心配されては困ります」
とゆっくり説明する様に話した。けれども
「何故そんな事を言うんだ。君を心配する事がそんなに悪いことか?」
杏寿郎さんが悲しげに眉を下げながらそんな風に言うものだから、なんだか私が杏寿郎さんに意地悪を言っているような気分になってしまう。困り果てた私は、助けを求める様に槇寿郎様と瑠火様の方を見た。
