第13章 暖かく和やかに
杏寿郎さんの運転で、最寄りの薬局までやって来た。
「ちょっと見てきますので、杏寿郎さんはその辺フラフラしててもらえますか?」
「わかった」
そう言ってカゴを片手にどこかへ行ってしまった杏寿郎さん。一方私は、以前もここで検査薬を購入した事があるので、真っ直ぐとそれが陳列されている棚に向かった。
棚に陳列された検査薬を前に私の心はドキドキと大きな音を立てる。
悪いことをしている訳でも、恥ずかしいことをしている訳でもないのにどうしてこんな気持になるのか。
前回と同じので良いか。
そう思いながら商品に手を伸ばした私の後ろからぬっと、大きな手が伸びてきて
「これで良いのか?」
と、私が取ろうとしていた商品をサッと取る。"え?"と思いながら振り返ると、ちょうど杏寿郎さんがぽいっとカゴの中に検査薬を入れているところだった。
「…っ杏寿郎さん!良いです!それは私が買いますから!」
カゴの中にある検査薬を取ろうとするもスッと避けられてしまい
「何故わざわざ別に会計をする必要がある?」
と意味がわからないと言う顔で私の方を見る。
「…何故…と言われるとなんとも言えませんが…とにかく!私が払うので良いです!返してください!」
「断る!」
そう言うや否や、杏寿郎さんはスタスタとレジへと行ってしまった。
「あー!待ってください!」
ただでさえ歩幅に差があるのに、早歩きなんてされたもんなら私が杏寿郎さんに追いつけるはずもなく、杏寿郎さんは空いているレジにスッと入りカゴを置いてしまった。
慌てて追いかけるも、会計が始まっている以上、わざわざカゴから取り出すのも憚れ
「じゃあ私が全部払います!なので杏寿郎さんはあっちに行っていて下さい!」
とレジから追いやろうとするも
「断る!」
と再び断られてしまう。
「もー!何でですか!」
そんなことを言っている間に、店員さんが検査薬をピッとレジに通し、小袋に入れ、他の製品と共にレジ通し済みの左側のカゴへと入れた。
「君こそ何故そこまで嫌がる!夫が妻のために検査薬を買うことの何が悪い!?」
「…っ!」
辺りに響く程の大声でそう言う杏寿郎さん、私の頬はカーッと熱を帯びる。
私が固まっている間にいつのまにやら精算が終わり、杏寿郎さんはさっさとカゴを持ちサッカー台に行ってしまった。