第13章 暖かく和やかに
パン屋さんの側にある公園のベンチで1人クロワッサンサンドを頬張っていると
ブブブブブ
ポケットに入れてあるスマートフォンが震え出した。
この震え方は…電話かな?
と思いながらポケットから取り出し画面を見ると、"杏寿郎さん"の表示が。愛する旦那様からの着信に私は頬を緩ませ、スマートフォンの画面をタップし
「もしもし」
と電話を取った。
"ナオ、今どこにいる?"
電話の向こうから聞こえてきた杏寿郎さんの声が、心なしかいつもよりも低く聞こえた。
「今ですか?駅のそばの公園です。さっきパン屋さんで買ったパンを食べているところです。杏寿郎さんはもうお家ですか?」
"あぁ。それよりも君に聞きたい事がある。すぐに迎えに行くからそこで待っていなさい"
「え?迎えに来るんですか?そんな大丈夫です!杏寿郎さん仕事から帰ってきたばかりでしょう?もう食べ終わったので今から帰り"迎えに行く。そこで大人しく待っていなさい"…わかりました」
私の言葉を遮ってまで迎えに来ると言う杏寿郎さんに、"知らない間に杏寿郎さんを怒らせる様な事をしてしまったのか"と不安に襲われる。
"今、車に乗った。着いたらまた電話をかける"
そう言って杏寿郎さんは電話を切った。
私は電話が切れたスマートフォンの画面を見ながら、ざわつく心をなんとか落ち着かせようと左薬指に付けてある結婚指輪をスルリと撫でた。
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10分もしない内に杏寿郎さんは迎えに現れた。車に駆け寄り助手席の扉を開けると、杏寿郎さんは何か言いたげな顔で私をじっと見ている。私はその表情になんと言って良いかわからず
「…っわざわざありがとうございます!美味しそうなさつまいもの入った食パンを買ったので、杏寿郎さんもおやつにどうですか?」
とわざと明るく言ってしまう。
「うむ。だがまずは話が先だ」
やっぱり杏寿郎さんの様子がおかしい。
「…はい」
力無く答える私を乗せ、杏寿郎さんの運転する車は真っ直ぐと煉獄家へと向かって行った。
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「ただいま戻りました」
帰宅の挨拶も早々に、杏寿郎さんは靴を脱ぎ終えた私の腕を引っ張り部屋へと向かっていく。途中、台所にいた槇寿郎様と瑠火様と目があったが心配そうな目をこちらに向けるだけだった。