第13章 暖かく和やかに
「…2時…?」
槇寿郎様の言葉が信じられず、スマートフォンの時計を見ると確かに時計は14:00と表示していた。
「…私…4時間近く…寝ていたのでしょうか…?」
「俺に聞くな」
タイマーがなったのに全く気づかなかったのか、はたまた無意識に止めてしまったのかはわからない。けれどもまさかそんなに寝てしまうとは、と思いポカンとしていると
「…お前、最近眠そうにしているが体調でも悪いのか?」
槇寿郎様が私と目線を合わせるようにしゃがみ、私の目をじっと覗き込む。
「そんな事はありません。確かに最近とても眠いですが…春になって暖かくなったからではないですか?"春眠暁を覚えず"って言うじゃないですか」
と私が答えるも、眉間に皺を寄せ、あまり納得が行っていないようだ。
「昼は食べたのか?」
「食べていません。お散歩がてら、ちょっと買いに行ってきます」
そう言って立ちあがろうとする私を、
「いや待て、瑠火が今ちょうど店にいる。連絡をしてやるから何か食べたいものがあったら言え」
と言いながら制止する。
「え?そんなわざわざ良いですよ。一回も外に出ないのも良くないですし、駅の近くにあるパン屋さんに散歩がてら行ってきます」
「……わかった。だが気をつけて行ってこい」
槇寿郎様はまだ何か気になる事があるのか、珍しく歯切れの悪い返事をしていた。
…槇寿郎様、どうしたんだろう?
鬼に襲われている人がいないか見廻りに行くのではない。近くのパン屋に行くだけだ。なのに何を気をつける必要があるのか。そんな事を考えながら、読みかけの本、ブランケット、そしてビーズクッションを部屋に持って帰り、すっかり冷え切った飲みかけの玄米茶とお煎餅を片づけるために台所へと向かった。
「行って参ります」
そう言って家を出る時も、槇寿郎様はわざわざ玄関まで見送りに来た。こんな事は初めてだった。
変な槇寿郎様。何か嫌なことでもあったのかな?
私はそんな事を考えながら、パン屋さんまでのんびりと歩いて向かった。
餡子が練り込まれた食パン。
さらにそのパンにさつまいもと黒胡麻が散りばめられた食パン。
チョコレートが練り込まれたデニッシュ。
そして今が私が食べているクロワッサンのサンドイッチ。
人気のパン屋さんは欲しいものがたくさんあり、気づくと予定よりもたくさん買っていた。
