第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
「…あの、私の話…わかってくれたんですよね?」
「うむ!ナオは酒に弱い。そして酔うと警戒心が薄くなる。それ故人前ではあまり飲まない。という話だろう?」
「あ…はい。その通りです」
杏寿郎さんはまた、グイッお猪口を飲み干し、再び徳利から注ぐ。
「ならばなんの問題もないだろう?今この場にいるのは俺と君の2人。何を警戒する必要がある?」
「…まぁ…確かにそうなんですけど…」
「それとも、その見ず知らずの男の前では酔えて、俺の前では酔えないとでも…?」
スゥッと細められる杏寿郎さんの目に、私の胸はドキッと音を立てる。何度も言うが、私は杏寿郎さんのその目に弱い。
「…そんなことは……ありません…けど…」
杏寿郎さんと出会う前の出来事に、そんな嫉妬しなくても、と内心思った。
「それにだ!自分の限界というものを知るのも大切だ!ここは旅館であり、すぐ寝れる!片付けも必要最低限で良い!帰りは電車!なんの心配もないだろう?」
そう言ってニコリと微笑む杏寿郎さんは、もう私を酔わせる気満々だ。
「…わかり…ました」
私は目の前に鎮座するお猪口を手に取り
「杏寿郎さん…私がどうなっても…責任とってくださいね…?」
「うむ!臨む所だ!」
杏寿郎さんのその返事を聞いた私は、
グイッ
とお猪口に注がれたお酒を一気に飲み干した。
フワッと香ったのは、イチゴの様に甘酸っぱく、日本酒とは思えない口当たりのいい味。今までで口にしたことのあるお酒とは比べ物にならない程、それは美味しいと感じた。
「…美味しい…!杏寿郎さん!このお酒、とっても美味しいです!」
そう興奮気味に言う私に杏寿郎さんは
「そうか!それは良かった!どれ、もっと飲むと良い」
と言ってお猪口なみなみにお酒を注ぐ。もはやヤケクソ気味の私はそれを咎めることもなく、今度はゆっくりと味わう様にそれ飲んだ。
「良い飲みっぷりだ」
そんな私の様子をニコニコと見ている杏寿郎さん。
「そうですか?もしかしたら私、自分で思っているよりもお酒に弱くないのかもしれません!」
「わはは!それは良かったな」
そう言って笑う杏寿郎さんの目が怪しく細められていた事に、甘酸っぱいお酒の味に夢中になっている私が気付けるはずもない。
私はまんまと杏寿郎さんの仕掛けた罠に嵌まったのだ。