第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
「…続きは、また後でだな」
そんな殺生な。
そう思いながら離れて行く杏寿郎さんを見上げると、杏寿郎さんは眉を下げ、困ったように笑いながら
「そんな顔をするんじゃない。俺とてかなり辛いものがある。ほら、そんな蕩けた顔をしていては中居さんに感づかれてしまう。ナオはトイレにでも隠れていなさい」
と言った。はたして私はどんな顔をしているのだろうか。どちらにせよ私の顔が、そして下腹部がトロリと蕩けてしまっているのは何となく感じていたので
「…っはい…」
と小さく返事をし、私はトイレへと逃げ込んだ。
パタンと扉を閉め、ドアに背中を預けてヘナヘナと座り込む。扉の向こうでは杏寿郎さんの「入ってきてくれ」と言う声と、「失礼します」と応えた中居さん達の声が聞こえてくる。
恐る恐る下着越しに自分のそこに触れてみると
…びしょびしょじゃない…っ!
信じられないほど濡れていた。恥ずかしさを抑え、トイレットペーパーでそこを拭き取り、トイレへと流す。下着が冷たいのはもう仕方ない。次に備え付けの手洗い場に行き顔でも洗おうと思い鏡の前に立つと
…っ!
"興奮しています"と言わんばかりの自分の顔に驚愕した。その顔を見て私は、トイレに逃げておいて良かった、と心底思った。
中居さんの気配が完全になくなった頃、私はようやくトイレから出ることが出来た。部屋をチラリと覗き込むと既にテーブルには夕食が並んでおり、その前に座っていた杏寿郎さんと視線が合った。杏寿郎さんは珍しく苦笑いを零し、
「美味い食事が冷めてしまわぬ内に食べよう」
と頬をポリポリと人差し指で掻きながら言った。
「…はい…」
熱がようやく収まった私も、杏寿郎さんの向かいの席にいそいそと座る。
「…なんか…すみません」
「謝る必要はない!食後に女将が言っていたお酒を持ってくれるそうだ!楽しみだな!」
正直言ってまだモヤモヤ…いや、ムラムラしている部分はある。けれども、テーブルに並べられた夕食があまりにも良い香りで私を誘うものだから
「…はい」
と応え私は食事へと手を伸ばした。
食べ始めるとまぁ不思議なもので、先程までの燻りなどすっかり忘れ、私は夕食を心から堪能した。けれども、その後食べ終えた食器を中居さんが取りに来てくれた際、目を合わせることが出来なかったのは致し方ないことだと思う。
