第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
部屋に戻るとフッと気持ちが緩んだのか、どっと疲れが押し寄せてきた。私はテーブルの前に座り、そこに突っ伏す。
「大丈夫か?今温かい茶をいれよう」
「…すみません」
せっかくの新婚旅行なのに、来るときの電車といい今といい、どうしてこんな事ばっかり起こるのか。
杏寿郎さんとの初めての旅行…楽しい思い出でいっぱいにしたかったのに。
嫌なことがあった時、良いことの方が沢山あるにも関わらず、そこにばかり目がいってしまうのはどうしてだろう。
コトリと私の突っ伏している側に、湯呑みが置かれた。
「飲むと良い」
杏寿郎さんはそう言うと、私の後ろに腰掛け、私のお腹にその腕を回し抱き込まれる。
「…自分一人でなんとか出来ると思ったのに…杏寿郎さんにも、女将さんにも迷惑を掛けてしまいました。…情けない」
「ナオは何も悪くないだろう。何をそんなに気に病む必要がる?」
「…だって…あんな酔っ払い2人も追っ払えなくて…周りの手を煩わせて…昔の私ならあんな奴らあっという間になんとか出来たはずなのに」
比べたって仕方がないことはわかっている。それでも私は、杏寿郎さんが安心して隣にいられる、そんな存在でありたかった。
テーブルに突っ伏しながらそう言った私の上に、杏寿郎さんもくっつくように身体を預け、同じような姿勢になる。
「…重いです…」
本当は重くなんかない。どちらかと言えばその重みと温もりが心地良い。けれども素直になれない私の口からは可愛くない言葉が溢れてくる。
「それはすまない。昔から思っていた事だが、君は少々周りを頼るのが下手なようだ。ああいった時は自分一人で解決しようとせず、すぐに周りを頼るといい」
そう言って杏寿郎さんは私の頭にスリスリと顎を擦り付ける。
「…なんとか出来ると…思ったんですもん」
「そうか。君はいつもその小さな身体で俺と共に戦ってくれていたな。あの頃の俺は隣に君がいると思うと、より強い気持ちを持って鬼と戦うことができた。だが鬼のいない今、君が無理をして強くあろうとする必要はない。今はただ、こうして俺の側にいてくれさえすればそれで十分。たまにこうして甘えさせてくれると尚良い!」
「…杏寿郎さん、私に甘えてるんですか?」
杏寿郎さんの思わぬ言葉に、私はむくりと起き上がる。私にくっついていた杏寿郎さんも同じように起き上がった。
