第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
キョロキョロと辺りを見回してみると、確かにこの時間にお風呂に入りに来る人は少ない様で、誰の姿も確認できなかった。
だからってこんな場所で…杏寿郎さんのスキンシップ好きにも困ったものだな。
なんて思いながらも、顔が緩むのを抑えられない私は逃げる様に女湯の暖簾をくぐり大浴場の中へ入った。
「…広ぉい!」
脱衣所の扉を開くと、その先には大きな湯船や、炭酸風呂、ひとりで入る五右衛門風呂、そしてよもぎサウナと、魅力的な場所がいっぱい。しかも殆ど人はおらず、ほぼ貸切状態だった。
こんなにのんびり入れるなんて…杏寿郎さんと別行動は少し寂しいけど、来て良かった!
あっちに入り、こっちに入り、気づくと30分があっという間に過ぎていた。あまり長湯をしてはのぼせてしまうと思い、脱衣所が空いている内にと私は大浴場を出た。着替え、スキンケア、ヘアケアに15分ほどかかったが、杏寿郎さんとの約束の15分前には女湯を出ることが出来、待ち合わせ場所であるお土産コーナーに行くと、まだ杏寿郎さんの姿はない。私は先程見ていない商品でも見ながら時間を潰すことにした。
この石けん、凄く良い香りだったな。身体もすべすべになったし…何個か買って、みんなにも分けてあげよう。
そんな事を思いながら石鹸を手に取っていると、
ガシッ
と後ろから肩を掴まれる。杏寿郎さんが来たんだと思い振り返ると
「…っ!」
「お姉さんこんにちはぁ」
あまり回っていない呂律と、赤ら顔でニヤニヤと笑う知らない男が2人。
「お姉さん可愛いねー!俺たちここに泊まりに来てるんだけど、よかったら一緒に飲まない?」
肩に乗っけられた手も、不躾に近づけられる顔も、お酒臭い息も、何もかもが不快で、私は顔を顰める。
「うわっ!そんな顔も可愛いねぇ!どこから来たの?」
「…夫を待っているので、離してくれませんか?」
出来る限りの低い声で、威嚇する様に答えたが
「えぇー?どうせ嘘でしょ?だって指輪もしてないし、さっきから1人だったじゃん!」
私はバッと自分の左薬指を見る。
しまった。万が一変色したら大変と思って外したままだった。
そう言って私の手首をグッと強く掴み、引っ張って行こうとする2人。振り払おうと腕を動かすが、今の私は成人男性2人に敵うような力は持ち合わせていない。
…この酔っ払いめ。
