第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
連絡先を聞きたい気持ちがなかったわけではない。けれども、そうしない方がハナエさんのためだと思った。
「…私と深く関わることで、前世の記憶が呼び起こされる可能性もありますよね?…愛する人を亡くしたことも…ましてや鬼に襲われてしまったことなんて…思い出さない方が良いんです。例え私と過ごした時間を忘れてしまっていても、ハナエさんか今幸せであれば、そんなことはどうでも良いんです」
「…そうか」
杏寿郎さんはそう言うと私の頭をポンポンと優しく撫でた。
「失礼します」
襖の向こうから声がかけられ、すっかりお腹がペコペコになってしまった私たちの元へ念願のお昼ご飯が運ばれて来た。襖が開かれる前に杏寿郎さんの手がぱっと離れて行きほんの少し寂しい気持ちになるものの、目の前に運ばれて来た美味しそうな炊き込みご飯の香りに、私の意識はあっという間にご飯へと奪われる。
杏寿郎さんの前に置かれたのは杏寿郎さんが頼んだ鶏肉とサツマイモの炊き込みご飯。私の前に置かれたのは私が頼んだホタテとキノコの炊き込みご飯。
「良い匂いですねぇ…」
スンスンと鼻を動かし、その豊かな香りを堪能する。
「うむ!食べよう」
「はい」
お互いに少しずつ分けっこしながら食べた炊き込みご飯は、今で食べたどんな炊き込みご飯よりも美味しくて食べ終わるのがもったいないと思う程だった。
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旅館に戻って来た杏寿郎さんと私は受付のすぐそばにあるお土産コーナーを覗いていた。
「槇寿郎様は…やっぱりお酒ですかね?」
「そうだな。昨晩少し頂いた日本酒はとても美味かった!あれと同じものはあるだろうか?」
「えっと確か…あ、これですよ!この亀みたいな名前のお酒!」
「よしそれにしよう!」
私はそのお酒を取り、持っていたカゴに入れた。そのままお酒が展示されているエリアから移動しようとしていると
「俺が持つ」
と、杏寿郎さんにカゴを奪われてしまう。
「あ!大丈夫です!それ位私が持ちますから」
と言ったものの、カゴを返してくれる様子はなく"仕方ないな"と諦め瑠火様向けのお土産を探そうと石鹸コーナーへと移動した。
「杏寿郎さん」
私が目ぼしいものを見つけ杏寿郎さんを呼ぶと、温泉まんじゅうをたくさんカゴに入れた杏寿郎さんがこちらにやって来る。
「瑠火様にはこの石鹸はどうです?」
