第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
杏寿郎さんが私の元に辿り着く。
「そんな事はない!今日のナオはとても素敵だ!いや、普段も十分素敵なのだが、今日は特に!」
そう言って私の両肩をに手を置き、私を褒めちぎる杏寿郎さんの言葉が恥ずかしくて、今の私の顔はなんとも情けない照れ笑いになっていただろう。
杏寿郎さんがフッと屈んできたかと思うと、
ちゅっ
と、私のおでこに口付けを落とす。杏寿郎さんの唇は中々離れていかず、10秒ほどそのままの口付けられていた。突然の杏寿郎さんの行動に驚き、目を見開きポカンとしていると
「君の驚いている顔は昔から本当に可愛らしい。だか、もう少し自然な表情の方が写真に残すのには良いのではないか?」
「…っ写真!」
私は杏寿郎さんのその言葉で、ようやくこの様子を写真に収めてもらっていた事を思い出した。
「やだやだ!どうしましょう!私ったら…杏寿郎さんに見惚れてそんな事すっかり忘れていました!絶対に間抜けな顔しかしていません…っ!」
「そんな事はない!はにかんだ顔も、花の様な笑顔も、こねずみの様に驚いた顔も、全て魅力的だ!」
はにかんだ顔、
花の様な笑顔。
そこまでは良い。けれども
こねずみの様に驚いた顔。
とは、いったいどう言うことか。あまりにも杏寿郎さんが普通に言うので、そのまま聞き流しそうになった。
「…こねずみ…?」
「うむ!こねずみだ!正確に言えばハツカネズミだな!」
「私…ハツカネズミに…似ているんですか…?」
「うむ!蝶屋敷で初めてナオと対面した時、君は大層驚いた様子で俺の顔を見上げていただろう?あの顔が、俺が幼い頃台所で見かけたハツカネズミに似ていてな!あまりにもかわいかった故捕まえようとしたのだが、あっという間に逃げられてしまい、残念で仕方がなかったのを今でもはっきりと覚えている!」
杏寿郎さんは目をつぶり、顎に手を当て、うんうんと1人頷いている。恐らく、そのハツカネズミを見かけた時の光景を思い浮かべているのであろう。
杏寿郎さんに悪気がないことも、そのハツカネズミとやらを心から可愛いと思っている気持ちは良くわかった。けれども、白無垢を纏った妻を前に"ハツカネズミに似ている"とはどう言うことだろうか。
「…そうですか」
力無く曖昧な笑みを浮かべる私の様子に杏寿郎さんは気づかない。