第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
初対面の相手が、自分を見るや否や硬直し泣き出したらさぞ不思議に思うだろう。私ははっきりと覚えているが、あの様子だとハナエさんに前世の記憶はない。せっかく今世のハナエさんと会えたというのに、不審に思われ嫌われてしまうのは避けたい。
すぅ…はぁー
すぅ…はぁー
と2回深呼吸をし、乱れてしまった心を整える。
「杏寿郎さん…」
「なんだ?」
「ギュッてして下さい」
「任せろ!」
そう言うと杏寿郎さんは私が強請った通り私の身体をギュッと、苦しくない程度に抱きしめてくれる。
「…ん。ありがとうございます。もう大丈夫です」
私の言葉に杏寿郎さんか腕を緩めたと思うと
ちゅっ
と本当に軽い口付けが一度落とされた。
「…キスは…お願いしてませんけど?」
「そうだったろうか?」
と言って惚けた顔をする杏寿郎さんに、私の顔には自然と笑顔が戻ってきた。
「お待たせしてすまない」
杏寿郎さんと私が部屋に戻ると、ハナエさんとそのご主人は紙を見て打ち合わせをしている様だった。
「いいえ。そんなに待っていませんのでお気になさらず」
ハナエさんはパッと立ち上がり私の方に駆け寄ってくると
「体調は…大丈夫ですか…?」
と心配気に私の顔を覗き込む。私はニッコリとハナエさんが安心する様に
「大丈夫です。すみません。実は、あなたが昔良くしてもらった近所のお姉さんにとても似ていて…その人には…もう会えないんですけど。だからあなたのお顔を見たら、そのお姉さんの事を思い出してしまって、思わず…。ご心配をお掛けしてすみませんでした」
「あら?そうなの?それは偶然ねぇ。よし!今日は新婦様の大切な挙式の日ですもの!私の事をそのお姉さんみたいに思ってくれて良いのよ!」
そう言って笑うハナエさんの笑顔が、かつて私に笑いかけてくれた時と重なって、胸の奥から熱い何かが込み上げてくる様だった。
「…っありがとうございます。あの、お名前を伺っても…良いでしょうか?」
「私?私はハナエって言います!新婦様は…確かナオさんよね?」
やっぱり、名前も一緒ということは、今目の前にいるハナエさんはあのハナエさんの生まれ変わりで間違いないようだ。
「はい!今日は…どうぞよろしくお願いします」
「まっかせて頂戴!腕によりをかけるわ!」