第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
スマートフォンのカメラアプリを起動し、カメラの設定をインカメラへと変え、杏寿郎さんと私の顔が入るように腕を伸ばす。
「じゃあ撮りますよ?はい、チーズ」
カシャっと音が鳴り、杏寿郎さんから頬を離して撮った写真を確認すると
「…ふふっ。よく撮れてますね」
「うむ!中々良い写真だ!」
仲良くフェイスマスクをつけた顔を寄せ合って、ニコリと微笑む杏寿郎さんと、これまた嬉しそうに笑っている私。
後でこっそりスマートフォンのホーム画面に設定しようと、私はその写真を保護設定した。
「…杏寿郎さん…まだ起きていますか?」
お布団に入ったものの緊張からか目が冴えてしまって中々眠ることが出来ない。まだ寝息らしき音が隣から聞こえてきていなかったので、もしかしたら杏寿郎さんもまだ起きているかもと思い声を掛けてみると、仰向けになっていた杏寿郎さんの身体がこちらに向く。
「眠れないのか?」
いつもと違う静かな声で杏寿郎さんが言った。
「…なんだか緊張してしまって…杏寿郎さんもですか?」
私も仰向けになっていた身体を、杏寿郎さんへと向けた。
「いや。緊張はしていない。だが色々思い出してしまってな」
「思い出す?何をですか?」
私の問いに、杏寿郎さんはピクリと肩を揺らした。けれども何も答えは返ってこない。じーっと私を見つめたまま黙ってしまった杏寿郎さんが心配になり、私は杏寿郎さんと私の身体の隙間を埋めるようにピッタリと身体を寄せた。
「…どうかしましたか?」
杏寿郎さんは一瞬私から目を逸らし、けれどもまたすぐ私を見る。
「…ナオと、死に別れた時の事を…思い出していた」
「…っ!」
そう言った杏寿郎さんの声は、普段の様子と比べてとても弱々しく、私は思わず杏寿郎さんの首に腕を回しその頭をかき抱いた。
「…何故今、急にあの時のことが頭に浮かんできたのか、俺にもよくわからない。だがあの時、死に際に見たナオの顔を思い出すと…胸が潰れてしまいそうになる」
「…杏寿郎さん…」
私は、少しでも杏寿郎さんの心が落ち着くようにと、腕に抱いた杏寿郎さんの頭を優しく撫でる。
「…確かに、私もあの頃を思い出して苦しくなることがあります。…それでも私は、あの別れがなければ良かったとは思いません。あの時のあの別れがあったから今があるんです」