第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
杏寿郎さんはいそいそと側にあった椅子を持ってくると、それを私のすぐ隣に置き、そこにドスンと座る。心なしかウキウキした様子の杏寿郎さんを"可愛いな"なんて思いながら、念のためと余分に用意しておいたフェイスマスクの袋を破った。中からシートを取り出し丁寧に広げ、
「はい。じゃあ顔をこっちに向けて、目をつぶってください」
と杏寿郎さんにお願いすると
「あいわかった!」
と素晴らしい返事の後、その力強い目をパチリと閉じた。私は、目を閉じ、大人しくこちらに顔を向ける杏寿郎さんの顔を思わずじーっと観察してしまう。
個性的だけどキリッと上がった眉。目を縁取る長いまつげ。通った鼻筋。キュッと上がった口角。何もかもが素敵で、私はフェイスマスクを貼ってあげるのも忘れ、杏寿郎さんの顔に見惚れていた。すると杏寿郎さんはパチリと目を開け
「ナオ?」
と不思議そうな顔で首を傾げた。
「…っすみません!では、気を取り直して!もう一度目をつぶってもらえますか?」
「うむ!」
再び目を閉じた杏寿郎さんの顔に今度こそフェイスマスク張り付けけようと、杏寿郎さんの顔にピラっと広げたそれを当てる。ずれないようにゆっくりと張り付けたものの、杏寿郎さんはその冷たさに驚いたのかピクっと肩を揺らした。
「はい。良いですよ」
杏寿郎さんは目をパチリと開け、鏡の方を見ると
「おぉ!これがフェイスマスク!ナオとお揃いだ!」
そう言ってとても嬉しそうに笑った。
「ふふふ。気に入ったようで良かったです。あの、折角だからこのお揃いの顔で写真を撮りたいんですが…良いですか?」
そうスマートフォンを見せながら私がそう尋ねると、
「良いぞ!これも旅行の思い出の一つ!」
まったく嫌がる様子もなく了承してくれた。
「やった!それじゃあ私のカメラで撮るので顔を近づけてもらっても良いですか?」
「こうか?」
杏寿郎さんは先程よりも近くには来てくれたものの、この距離だとまったく写りそうにない。
そう言えば、こうやって2人で写真を撮るのは…初めてかもしれない。
まさか2人で撮る初めての写真が、フェイスマスクをしている間抜けな顔のものになるとは。今の状況が急におかしく思えて、私はクスクスと笑いながら、杏寿郎さんの右頬にに自らの左頬をくっつけた。