第3章 魅せられる【side-K-】
「俺はこれから少し人に会いに行ってくる。遅くはならないが念のため用が済んだら烏を飛ばす」
「はい。帰ったら稽古を見ていただけないでしょうか?」
「うむ!もちろんだ!」
食べ終わった皿を「いいえ俺が片付けます」と断る千寿郎を無視して水場まで持っていき、流石に洗うまではさせてもらえなかったのでまだ早いが蝶屋敷へと出発することにした。
「失礼!柏木殿に会いに来たのだがどの部屋に行けば良いだろうか?」
たまたま通路にいた蝶屋敷の主人の妹殿に声を掛け、目的の人物の所在を尋ねた。
「柏木さんなら中庭にある縁側に行かれたようです。そちらの廊下を曲がれば着きますので、どうぞお進みください」
「承知した!ではお邪魔させていただく!」
「療養中の隊士も数多くいますので、出来ればもう少し静かにお願いしますね」
「うむ!あいわかった!」
「全然わかってないじゃないですか」と小言を言われたのは聞こえなかったことにしよう。
言われた通り廊下の角を曲がり目的の場所へと急いだ。
辿り着いた先で、目的の人物は座り込んで本を読んでいる。かなり集中しているのか近づいてもこちらに気がつく気配はない。どうやら医学書を読んでいるようだ。その集中して本を読む姿は、隊服を着ていないという事もあるが、鬼を見据えていたあの時はまた違う雰囲気でこうも変わるものかと驚く。
急に声を掛けたら脅かしてしまうだろうか?
そう思い、とりあえず気づいてもらえそうな距離まで近づいてみるが全く気づかない。仕方がないと思いながらさらに近づいて距離を詰める。いよいよ近づきすぎて彼女が自分の影に入ってしまった。
影に入ってしまい本が読みにくくなったせいか、ようやく彼女が顔をあげ、どんぐりのように丸くなった目と視線が合う。
「‥‥‥」
「素晴らしい集中力だ!剣術だけでなく医学の分野にも目を向けるとは俺も見習いたいものだ」
彼女と話ができる、そう思うと気持ちがどんどん先走って行くようだった。
彼女、いや柏木の話を聞き、何故鬼殺隊に入隊し、炎の呼吸の素質を持ちながら水の呼吸を使っているのかようやく合点がいった。そしてより一層自分の手で柏木を強くしたいと思った。だから「伸び悩んでいる」という言葉を聞いてこれはチャンスだと思った。