第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
最初は杏寿郎さんの大声に目を丸くしていた中居さんたちも、さすがプロというべきか数回を経て何の反応も示さなくなった。私だったら間違いなくこんな大声でうまいうまい言い続けるお客様がいたら気になって仕事どころではない。
けれども、デザートで出た極めて絶品な芋羊羹を食べた杏寿郎さんの
「わっしょい!」
の掛け声に驚いた中居さんがお盆を落とした時は、大変申し訳ないが思わず笑ってしまった。
食べ終えた食器を全て下げてもらった後、杏寿郎さんは食後の日本酒、私はコーヒーを頼んだ。明日は大切な挙式の日と言うこともあり、杏寿郎さんも日本酒を徳利一合飲むだけで済ませていた。私はと言えば、元々お酒に興味があまり無いので、食後のコーヒーを淹れてもらいその芳しい香りを楽しめればお酒を飲まなくても満足だ。
「とっても美味しかったですね!私あんなにサクサクで美味しい天ぷら初めて食べました」
「うむ!普段は塩焼きの方が好みだか、先ほど食べた鯛の煮付けも絶品だった。明日の食事もとても楽しみだ!」
そう言って嬉しそうに微笑む杏寿郎さんを見ていると、私も自然と笑顔になれる。
杏寿郎さんはお猪口に入っている最後の日本酒をクイッと飲み干し、私の空になったコーヒーカップをチラリと見る。
「腹は落ち着いたか?」
「お腹ですか?特に張ったりはしていませんけど…それがどうかしました?」
杏寿郎さんの質問の意図があまりピンとこず、私は首を傾げ杏寿郎さんの顔を見る。
「そうか!ではそろそろ風呂に入ろう!」
「…っ!」
杏寿郎さんの言葉で私はようやく、この後自分を待ち受けている"杏寿郎さんとの露天風呂タイム"を思い出す。
食事が美味しすぎて…すっかり忘れていた。っ外、外の様子は…?
スッと立ち上がり、露天風呂の様子が見えるところまで足をすすめる。そこから視界に入った露天風呂の様子は、良い感じにライトアップされており、"もしかしたら暗くてお互いの身体は見えないかも"とほんの少しだけ期待していた気持ちを打ち砕くには十分であった。杏寿郎さんは、露天風呂を見ながら立ち尽くす私に近づいてくると
「先に入るのと、後に入るの、もしくは初めから共に入るのどれが良い?それ位はナオに選ばせてあげよう」
私の耳に口を寄せ、囁くように言った。