第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
「…私には…無理です…っ!」
「無理なことなどない!」
「恥ずかしくて…死んでしまいますっ!」
「君は恥ずかしさで死んだ人間を見たことがあるのか?」
「…っそれは…ない…ですけど…」
「では大丈夫だな!」
顔を歪める私と、満面の笑みを浮かべる杏寿郎さん。もうこの流れに持って行かれてしまうと、どう足掻いても私は杏寿郎さんに逆らうことが出来ない。何とか杏寿郎さんを納得させる打開策をと、思考をぐるぐる巡らせるが、良い案が浮かんでくる様子もない。
杏寿郎さんはグルリと私の身体を自分の方に向け
「ナオは恥ずかしいのであって、嫌なわけではないのだろう?であればこの素晴らしい温泉を2人一緒に楽しまねばもったいないと言うものだ」
ニッコリと微笑みながらそう言った。
確かに杏寿郎さんの言う通りだと思った。1人で入って"気持ちかったですね"と言い合うよりも、羞恥心はどこかに置いておいて"気持ち良いですね"と2人一緒に笑い合った方が絶対に良い。それにこの旅は、新婚旅行である。一生にたった一度の行事を、2人で満喫することの方が、恥ずかしいと言う感情よりも遥かに大切だ。
「……杏寿郎さんの、言う通りですね。…っわかりました!一緒に…入りましょう!」
「うむ!ナオの背中は俺が流そう!」
杏寿郎さんが素敵な笑みを浮かべそう決定事項のように言うものだから、やっぱり一緒に入るのを無かったことにして欲しいとお願いしたが、もちろんそのお願いが聞き入れられることはなかった。
「煉獄様。この度は当旅館に足をお運び頂き誠にありがとうございます」
女将が挨拶に訪れた事で、このお風呂に一緒に入る入らない問題は一旦はお開きになった(正確に言えば、もう"一緒に入る"という選択肢以外ないのは明白だが、私がまだ決心がついていない、と言った方が正しい)。
明日の挙式の打ち合わせとして神社の挙式担当の人と電話で話している間に、あっという間に時間は経過し、今回の楽しみの一つである夕飯の時間が来た。
中居さんがお膳を持って部屋に訪れ、数々の品がテーブルに置かれていく。
「…美味しい…っ!」
口の中に広がる旨味に舌鼓を打つ私と、
「うまいっ!」
とお馴染みの声を何度もあげながら食べ続ける杏寿郎さん。