第12章 変わらぬ愛をあなたに誓う
杏寿郎さんは片付けの手を止めてくれたのか、こちらに向かって来る。
「こら。ナオも少しは手伝いなさい」
そんな風に言ってはいるが、その口調はとても優しいもので私を咎めている様子は全く窺えない。そして私の元まで辿り着いた杏寿郎さんは、私を背後からギュッと抱きしめた。
「見てくださいこの素敵な露天風呂!これが部屋についてて、いつでも入りたい放題だなんて…嬉しすぎます!」
「うむ!確かにそれは最高だ!」
杏寿郎さんの手がサワサワと私の胸に触れてはいるが、露天風呂に興奮している私は、そんな事は些細なものと思えてしまうから不思議だ。
「明日の打ち合わせと、食事が終わったら早速入ってきても良いですか?」
チョロチョロと流れ出る温泉。風を感じて揺れる木の葉。綺麗に敷き詰められた飾り石。何もかもが素敵に見え私の頭はもう露天風呂に入る事で一杯だ。
「そうだな。食事を終えたら2人で入るとしよう!」
そう言いながら杏寿郎さんは私を抱きしめる強さをギュッと強くした。
"2人で入るとしよう"
杏寿郎さんのその言葉に、私の頭はサッと冷静さを取り戻す。
「…ふ…2人で、入るの…ですか…?」
私の問いに杏寿郎さんは
「うむ!その為に選んだ離れの部屋だ!」
と間髪入れずに答える。
"その為に選んだ離れの部屋"
その為とはどの為か。恐ろしすぎて聞きたいのに聞けない。
「…別々に…入るのでは、ダメですか?」
杏寿郎さんを見上げながら恐る恐るそう尋ねると
「ダメに決まっているだろう」
またもや間髪入れず、更には訳がわからないという表情で答えが返ってくる。
「…でも…でも…恥ずかしい…です」
「恥ずかしい?ホテルで一緒に入っているではないか」
私の頭に蘇る、ホテルでの記憶。
「ホ、ホテルでは!毎回…動けなくなるし…朦朧としてるし…っそれに…暗いですよね?」
そう。ホテルでは抱きつぶされ、毎回の如く身体も意識もフラフラのまま、杏寿郎さんにお風呂へと放り込まれる。けれどもなんとか"暗くして欲しい"となけなしの理性を動員しお願いしているのが現状だ。
けれどもこの露天風呂はどうだ。明るい時間帯はもちろんのこと、暗くなってからもきっとライトアップされお互いの身体は丸見えだ。隠れる場所もない。そんな場所に杏寿郎さんと2人で入れと言うのか。
