第11章 待ち侘びた日々
不動産屋さんが引っ越し業者と提携を結んでいたため、その場で引っ越しの日程も決めてしまった。流石判断の早い男、煉獄杏寿郎だ。来週末は大忙しだな、と思いつつも、隣でとても嬉しそうにしている杏寿郎さんを見ると、"まぁ、良いか"と思えてしまうから仕方がない。
昼食にラーメンを食べ、その後は最寄りの大型家具屋さんに車で向かい、カーテンのみを購入した。あくまでも今回借りる事にした部屋は"週末に思いっきりナオを抱きたい"という杏寿郎さんのしょうもない望みを叶えるための部屋だ。多くても週に2日程度しかいないのだから、家具家電は私が使っていたものを使えば充分。流石にシングルのベッドに杏寿郎さんと2人で寝るのは狭すぎるので、それは後で引っ越しが済んでから買おうと言うことになった。
---------------------------
「煉獄様!お待ちしておりました。今持って参りますので、そこの椅子にかけて少々お待ちください」
店主に勧められた椅子に掛け、出してもらったお茶を啜る。結婚指輪の存在を忘れていたくせに、いざ欲しいものを見つけ、それを杏寿郎さんと一緒につけられると思うと嬉しくて堪らなかった。
「いやにソワソワしているな」
「だってあんな素敵な結婚指輪をはめられるなんて…凄く嬉しくて」
そんな様子を杏寿郎さんに見透かされ、恥ずかしさから頬に熱が集まる。
「あ!それにですね、昨日蜜璃ちゃんに"煉獄さんは女性にモテるからちゃんと結婚指輪をつけてアピールしなきゃダメよ"なんて言われてしまって…何だかあの素敵な指輪が、杏寿郎さんが"私の旦那様"って印みたいで嬉しいんです」
照れ隠しのためか、気がついたら余計なことまで口走っていた。しまったと気がついた時にはもう手遅れで、杏寿郎さんは、私のその発言に驚いたのか、ただでさえ大きな目を見開き私を見ていた。
「…引きましたかね…?」
目を見開いたまま固まってしまった杏寿郎さんにそう問うと、杏寿郎さんは眉を下げとても優しい顔で
「ナオは本当に可愛らしい。俺はそんな君が愛おしくて堪らない」
と言って、私の頬をその大きな手で撫でる。
「…っありがとう…ございます…」
何と返していいかわからない私は、何故か杏寿郎さんに感謝の言葉を述べていた。