第11章 待ち侘びた日々
「結婚指輪となると、やはり青い石、サムシングブルーが定番なのでこの色は普段はあまり使わないんです。個人的にはとても気に入っている商品なので、お二人に選んで頂けてとても嬉しいです!」
先程までの穏やかな雰囲気と違い、興奮気味にそう話す店主の様子から、指輪を作るのが心から好きなのだなと微笑ましい気持ちになる。
「因みにその石は"ガーネット"と言う石で、"情熱"、"実り"、そして"変わらない愛情を誓う"という石言葉を持っています」
"変わらない愛情を誓う"
店主のその言葉を聞き、やはりこの指輪以外あり得ないとそう思った。
「うむ!やはり俺たちにピッタリだ!これを買わせて貰おう!」
「ありがとうございます。今お出しするので、少々お待ちください」
そう言った店主は手袋をはめると、ショーケースの鍵を開け、指輪を取り出す。
「サイズを見たいので、お二人とも一度はめていただいても宜しいですか?」
そう言って差し出された指輪を、杏寿郎さんと私はそれぞれ受け取った。落としたりしたら大変だと思い、私は恐る恐るそれを自分の左薬指に持っていきゆっくりとはめる。するとその指輪は、第2関節部分でほんの少し引っかかりはしたものの、私の指に嘘みたいにピッタリとはまった。
「…凄い…」
そうボソリと呟いた声を拾った杏寿郎さんが、私の指に嵌められた指輪を見る。
「まるで君にあつらえられた物のようにピッタリだな!…残念だが俺の方は少しキツイようだ」
杏寿郎さんの指輪は完全に第二関節部分で止まってしまっており、それ以上はどう頑張っても進みそうにない。
「心配には及びません。その程度であれば、すぐに私の方で手直し可能です。もし半日程お時間頂ける様であれば、今日中にお渡しできますか如何でしょう?」
その店主の言葉に杏寿郎さんはパッと顔を明るくし
「是非ともお願いしたい!」
と、目を輝かせて言った。
私の方は手直しの必要はないので、もし希望するので有ればそのままつけて行ってもらって構わないと言われたが"杏寿郎さんの指輪と一緒に受け取りたいので大丈夫です"と丁重にお断りすると"仲良しなご夫婦ですね"と店主に笑われてしまった。
4時頃にまた来ると約束し、杏寿郎さんと私はジュエリーショップを後にした。時計を見ると、まだ時刻は10時半。約束の時間まではまだまだある。
