第11章 待ち侘びた日々
取り敢えず全部見てみようと思い、左から右へと並べてある指輪を流し見る。
確かに凄く綺麗で、どれも素敵だけど…私にはどれも同じに見えちゃう。
そう思いながらも、どんどん見ていく。
「…あっ…」
とてつもなく心惹かれた指輪があり、私の口から思わず声がもれ出てしまう。
「気に入ったのがあったか?」
杏寿郎さんはそう言って顎に手を当て、真剣に指輪を見ていた目線を私へと向けた。
「杏寿郎さんは…ありましたか?」
「うむ!一つあったのだが、果たしてそれが結婚指輪として相応しいのかどうか悩んでいる。まず、ナオが気に入ったものを教えて欲しい」
「…でも、私がそれが良いと言ったら杏寿郎さんは絶対それを選びますよね?それでも良いんですか?」
「君が気に入ったものがあればそれが1番だ。何せ俺は君に婚約指輪をあげられていない。だから結婚指輪は君が最も気に入り、欲しいと思うものを買わせて欲しい」
婚約指輪もなにも、私達は再会してすぐに結婚したんだ。そんなの準備しろと言う方が無理な話。それでも私は、杏寿郎さんのその想いがとても嬉しと感じた。
「…ありがとうございます。私…この指輪にしたいです」
私が指差したのは、シャンパンゴールドで緋色の石が施された指輪。その指輪は、女性用には中心より少し左めの外側に石が埋め込まれており、男性用は女性の指輪よりも1.5倍程太めで、同じ石が内側に埋め込まれていた。
シャンパンゴールドと緋色の石が杏寿郎さんによく似合うと、その指輪が目に入った時、即座に思った。そして、その杏寿郎さんによく似合う結婚指輪を2人ではめたいと思った。
「…決まりだ。実は俺もその指輪が良いと思っていた」
杏寿郎さんはそう言いながら、私の肩をグッと引き寄せる。
「本当ですか!?それは嬉しいです!」
はしゃぐ私を杏寿郎さんはニコリと微笑み見ていた。
杏寿郎さんが店主を呼び、ショーケースに飾られているお目当ての指輪を指差すと
「おや!お二人が選んだ結婚指輪はこれですか!実はこれ、僕が別の石を頼んだつもりで、誤って頼んでしまった物で作った品なんです」
と意外そうな、けれども嬉しそうな様子で言った。
「そうなんですか?とても素敵な石だと思うんですが…」
確かに他に展示されている結婚指輪を見ても、同じ緋色の石が施された物はひとつもなかった。
