第11章 待ち侘びた日々
カーナビに写っていた程だったので、ホテルにはあっという間に到着した。"IN"と言う表示に従い建物の敷地内に侵入していく。なんだかこの時点でいけない事をしているような気になって、私は運転しながらもとてもドギマギしていた。
「そこ、そこに入って車を停めるんだ」
「…っはい!」
…っ結構狭い。擦ったら…どうしよう。
ハンドルを切り狭い駐車スペースになんとか無事車を停めた。ほっとため息をつき、私がエンジンを切りサイドブレーキを踏んでいる間に、杏寿郎さんは助手席からぬっと腕を伸ばし後部座席から鞄をひょいと拾い上げる。そして、緊張でシートベルトを外すのを忘れていた私のベルトのスイッチを、杏寿郎さんがカチリと外す。
「行こうか」
「…はい」
「わはは!緊張しているのか?さっきから全く喋っていないぞ?」
図星をつかれ、私の頬に熱が集まる。
「だって…っ!こんな場所初めてなんですもん!」
「俺とて同じだ!そんなやつは俺くらいだと、ついこの間まで宇髄に笑われていた!」
そう言いながら杏寿郎さんは助手席から降り、車の前方をグルリと回って運転席の方に来た。ガチャリとドアを開け
「おいで」
と差し出された手に、私は吸い寄せられるように手を重ねた。
「凄い…。中はこうなっているんですね」
杏寿郎さんに手を引かれながら恐る恐る入った室内は、まるで観光地にあるホテルのような豪華な作りで、私は緊張していたのも忘れ部屋の中心でグルリと回り、思わず部屋中を見回してしまった。
「この間入ったシティーホテルとは全く違うな」
「…っ!」
杏寿郎さんはそう言いながら私をギュッと強く抱きしめ、耳元に口を寄せ
「宇髄が言っていたが、こう言った類のホテルは"それ目的"で出来ている故、思い切りまぐわえるそうだ。…声も、出し放題だ」
と囁くように言った。その誘うような声に、私の下腹部はキュンと熱を帯びる。杏寿郎さんに顎をグイッと持ち上げられ、お酒の匂いがする唇が私のそれに押しつけられる。
ちぅ…ちゅぷ…ちゅっ…
「ん…んぅ…ふ…」
初っ端から舌を差し入れられ、杏寿郎さんの普段よりも熱い舌とお酒の匂いで頭がクラクラする。
ちぅっと音を立て離れていく唇に、私はトロンと杏寿郎さんを見つめる。
「…っその顔。堪らないな」