第11章 待ち侘びた日々
「明日二日酔いにならないと良いですね」
「心配には及ばない!俺はこれまで一度も二日酔いなった事はない!」
あれ程の量を飲んで二日酔いにならないとは俄かに信じ難いが、杏寿郎さんがそう言うのであれば本当なのだろう。
「ほら!もう良い加減に離してください!駐車場に行きますよ」
そう言って私にのし掛かる杏寿郎さんの身体を押し退けると、意外にもその身体は簡単に離れて行った。けれどもその顔を見ると何やらとても悲しげな顔をしており、私の胸はその母性本能を擽る顔にキュンと高鳴る。私が自ら杏寿郎さんの手に手を絡め、恋人繋ぎをし、
「帰りましょう?」
と優しく微笑みかけると
「うむ!」
と杏寿郎さんは可愛らしい笑顔で言った。
駐車場に着き、車に乗り込みエンジンを掛ける。念のためと思い、スマートフォンのナビゲーションアプリを煉獄家にセットしていると
「違う。目的地は…ここだ」
そう言って杏寿郎さんがカーナビを指差した先にはこの辺りで名の知れた所謂"ラブホテル"が。私の頬にカッと熱が集まる。
「…っでも…今日は帰るんじゃ?」
「いいや!母上には帰らないと伝えてある!」
いつの間にそんな話になっていたのか。
「…っでも私、服も…下着も持ってきていません…」
「心配いらない!俺が君の分も用意し、持ってきた!俺の1番のお気に入り、ミントグリーンの花柄だ!」
"ミントグリーンの花柄"。それは確かに杏寿郎さんが、やけに食いついていた私の下着の柄だ。
「…っ誰も杏寿郎さんのお気に入りの下着の柄なんて聞いていません!」
「服は君がいつも着ているワンピースとキャミソールも持ってきた!だからここに泊まろう!…だめだろうか?」
杏寿郎さんは甘えたようにそう私に問うてくる。
車に乗り込む時、やけに荷物が多いなとは思っていた。まさかこうなる事を見越して、私の着替えまで持ってきていたとは(いや確信犯か)。最低限の化粧品は持ち歩いているし、あぁ言った場所には女性用のケア用品が充実して置かれていると、雑誌で読んだ事もある。
…昨日は我慢させてしまったし、仕方ないか。
「わかりました。…自分で運転していくのはなんとも恥ずかしいですが…そこまで言うなら行きましょうか」
杏寿郎さんはパッと顔を明るくし
「うむ!道案内は俺がする!」
と声を弾ませ言った。
