第11章 待ち侘びた日々
その後大人組は個室のある居酒屋へと場所を変え、二次会を決行した。夜になると街や森を駆け回り、寝る間も惜しんで鬼を退治していた私達が、夜の街でお酒を飲んで笑い合っている。こんな普通な事が、信じられない位幸福に感じる。
あんな風に、酔っ払って楽しそうにしてる杏寿郎さん…初めて見る。
前世では、全くと言って良いほどお酒を飲むことがなかった杏寿郎さん。きっと槇寿郎様の事もあり、お酒を飲むと言う行為が好きではなかったのだろう。けれども、今目の前でお酒を飲んでいる杏寿郎さんは、本当に心からこの場を楽しんでいるようで、その事が私には堪らなく嬉しかった。
「ナオさんは相変わらず煉獄さんの事が大好きなんですね」
お酒も飲まず、楽しそうな杏寿郎さんの姿をただただ見ている私にしのぶさんは若干呆れていた。
「もちろんです。あんなに素敵な方、他にはいません」
「はいはいご馳走様です」
「でもどちらかと言えば煉獄先生のナオさんへの思いの方が強烈よね」
「私もそう思います!さっきの誓いのキスなんて…胸がキュンキュンを通り越してバックンバックンしちゃいました!」
「…あれは…どうか記憶から消去してください。あ、そう言えばあの時吹き出してたの、絶対にしのぶさんですよね?」
「あら?どうしてわかったんです?」
「だってしのぶさん、昔から杏寿郎さんのあぁ言った行動で私が困っている時、凄く楽しそうにしていましたもん」
「あらあら。私がそんなことする訳ないじゃないですか」
この間会って話したばかりなのに、私達の会話は途切れる事なく、次から次へと話題が湯水のように溢れ出てくるから不思議だ。
「ところで煉獄さんとナオちゃん、結婚指輪はしないの?」
「…結婚指輪…?」
私はこの時初めて、"結婚指輪"という言葉が頭に浮かんだ。
「その顔はすっかり忘れてたって顔ですね」
「まぁ2人とも、一般的には信じられないくらいのスピード結婚ですものね。用意する暇もなかったって感じかしら?」
用意も何も、今の今まで結婚指輪について考えた事もなかったのだから仕方ない。私は思わず自分の左薬指をジッと見る。
「結婚指輪、しておいた方が良いと思うの!特に煉獄さんは女性にモテるみたいだし…ナオちゃんっていう相手がいるのをきちんとアピールした方が良いわ!」