第11章 待ち侘びた日々
「おし!派手派手に…誓いのキスだっ!」
腹を括れ柏木ナオ!いや、今はもう煉獄ナオ!誓いのキスなんて一瞬で終わる。
羞恥心を心の奥底へと沈め、私は杏寿郎さんの顔をじっと見つめる。杏寿郎さんは、私の顎をクイッと掴むと、一度ニコリと微笑みその猛禽類のような綺麗な瞳をスッと細めた。私もそれに習い静かに目を閉じる。
ちぅっ
と杏寿郎さんと私の唇が触れる。
「やだやだ!素敵!」と言う蜜璃ちゃんの声や、「いーやーっ!!!」と叫ぶ善逸くんの声や、「…っ!」と息を飲む音など様々な反応が耳に入る。
杏寿郎さんの唇が離れる気配を感じ、"あぁやっと終わる"と安心していると
ちぅう
離れたのは一瞬で、何故か先ほどよりも心なしか激しい口付けが再び落とされる。私が驚きのあまりパチリと目を開けると、目の前には長いまつ毛と閉じられた瞼。
グッと杏寿郎さんを引き剥がそうとしたが
…っ離れない!
私の顎をしっかりと掴む杏寿郎さんは全く離れていく気配がない。私たちを見守るみんなも若干ざわつき出す。
ねぇ待って。こんな長くて…しかも食むような誓いのキスなんて…聞いたことない。
離れてはまた触れ、触れてはまた離れ。何度それを繰り返したのだろうか。杏寿郎さんはようやく私の顎から手を離し、私はようやくこの地獄のような(2人きりなら天国なのに)時間から解放された。
震える口を押さえながら恐る恐るみんなの方を見ると
カナヲちゃんの目を塞ぐカナエさん
アオイさんの目を塞ぐしのぶさん
禰󠄀豆子ちゃんの目を塞ぐ炭治郎くん
そしてその炭治郎くんの目を塞ぐ冨岡様
善逸くんと伊之助くんの目を塞ぐ宇髄様
玄弥くんの目を塞ぐ不死川様
時透様の目を塞ぐ悲鳴嶼様
口を押さえ叫ぶのを我慢している蜜璃ちゃん
おでこに手を当て呆れ返っている伊黒様
となんとも言い難い光景が。
「なぁ、煉獄。調子に乗って煽った俺が悪い。だがな、普通誓いのキスでそこまで派手にキスする奴は何処にも居ねぇ」
「わはは!すまない!つい、いつもの癖でな!舌を入れなくて良かった!」
そう笑いながら言った杏寿郎さんの言葉に、"プハッ"と誰かが吹き出した音が聞こえた。
「杏寿郎さんの…杏寿郎さんの……ばかぁぁぁあ!」
羞恥心のあまり私は泣いた。