第3章 魅せられる【side-K-】
いつも通りの任務の帰りだった。自身の鎹烏の要を連れ帰路についていたときだ。森の向こうから何かがこちらに向かってくる気配にそちらを向く。
「救援求む!救援求む!ナオが危険!」
そう必死に喚きながら1匹の烏が飛んでくる。一瞬で状況を理解し、猛スピードで烏の元に向かった。烏は助けに来てくれることを理解したのか踵を返し自身が来た方向へとまた飛んでいく。
急ぎたどり着いた所では、自分をここまで連れてきた烏の主人であると思われる隊士と鬼が睨み合っているところだった。彼女は見るからにボロボロで血だらけだ。しかし鬼を見えするその瞳には炎が燃え上がるような強い意志を感じ、引き込まれる何かがあった。
鬼はこちらの存在に気づいたのか、一瞬目が合う。その一瞬の隙に気づいた彼女は強く地面を蹴って跳躍し、さらに勢いを付けて鬼に技を放つ。
「水の呼吸拾の型 生生流転」
赤色の日輪刀を構えていたのでてっきり自分と同じ炎の呼吸の使い手だと思ったいた。しかし放たれた技は水の呼吸のそれだった。驚きもしたが、それ以上にその剣技のしなやかさに強く惹かれた。放った技は見事鬼の頸を切り落とす。
確実に頸を切り落とそうとかなり勢いをつけたのだろう。技の勢いは止まる様子を見せず、そのままでは木に激突しその身が危険だ。呼吸を使い先回りをしその身体をうけとめる。
「‥っ!!!」ズザザッ。
勢いのあまり後退はしたもののその身体をがっしりと受け止める。木にぶつかることを覚悟していたのだろう彼女は自分になにが起きたのか理解できていない様子で、「‥木じゃない‥」とボソッと呟き、視線を上げたようだった。しかし身体は限界だったようでそのまま意識を手放した。
着ていた羽織をなんとか脱いで地面敷き、傷に響かないよう彼女の身体を横たえる。
呼吸の常中は出来ているが出血が多すぎて止血が追いついていない。急いで蝶屋敷に運ばねば。
蝶屋敷へと烏を先に飛ばし、出血の多い箇所を持っていた布でキツく縛る。
「‥っう‥」
「すまない。だがこれ以上出血すると君の命が危険なんだ」
悪いと思いながらも呻き声を上げるのを無視し、急いで止血を終える。敷いていた羽織ごと彼女を丁寧に抱き抱え蝶屋敷へと急いだ。