第11章 待ち侘びた日々
「ほれ。お前はここだ」
杏寿郎さんはというと私の右側に立たされている。気づくと集まった面々は丁度私たちの目の前に並ぶような形で立っており、状況についていけない杏寿郎さんと私は目を合わせ、首を傾げ合う。
「ふふふ!準備は良さそうね!それじゃあ、煉獄さん、ナオちゃん、2人で一緒にその箱を開けて頂戴!」
と、蜜璃ちゃんが満面の笑みで言った。杏寿郎さんは考えるのをやめたのか
「うむ!この箱を開ければ良いのだな!ではナオ開けるぞ!」
と潔く蜜璃ちゃんの指示に従う。
「はい。では"せーの"で行きましょう。…せーのっ!」
スッと箱を上に挙げたその先にあったのは
「…っ!これ…っ」
"煉獄さん・ナオさん結婚おめでとう"
とチョコペンでメッセージの書かれた、フルーツがたくさんのった大きなケーキだった。
「ふふふ。驚いたかしら?煉獄先生とナオさんが、披露宴はしないって聞いたから急遽用意したのよ」
カナエさんはまるで、悪戯が成功した子どものような笑みを浮かべ杏寿郎さんと私を見る。
「素晴らしい出来栄えですね」
「よもや!このケーキは手作りか!」
「その通りです。ちなみに作ってくれたのは…」
と、しのぶさんが目線をやった先から出てきたのは
「「「私たちでーす」」」
カナヲちゃん、アオイちゃん、禰󠄀豆子ちゃん、そしてまさかまさかの玄弥くんだ。女の子3人はニコニコと可愛らしい笑みを浮かべ、玄弥くんは少し照れくさそうに頬かきながら、いつの間にやら扉のそばに並んで立っていた。
思わず私はそちらに駆け寄り
「…みんな…ありがとう!あんな素敵なケーキ…凄く…凄く嬉しい!」
カナヲちゃんも、アオイちゃんも、そして鬼であった禰󠄀豆子ちゃんも、私が話し掛けるといつも表情を綻ばせてくれた。あの頃と変わらない、いや、あの頃よりももっと明るく可愛い笑顔を浮かべる3人に、つられるように私も自然と笑顔になる。
玄弥くんは、そこまでたくさん関わりがあった訳ではないけれど、悲鳴嶼様のところで柱稽古を受けた時、上手くいかない私に照れながらも優しくアドバイスをくれた。そして不死川様の事を聞かれ、知っている事をほんの少し教えてあげると、見かけによらず優しい笑顔で笑っていたのをとてもよく覚えている。