第11章 待ち侘びた日々
心地よい温もりと、大好きな杏寿郎さんの声を聞いていると、涙が止まるどころか更に量を増してしまう。
「…ごめんなさい…っ…もう少ししたら落ち着くと思うので…先に戻っていて下さい」
そう言ってやんわりと杏寿郎さんの腕を外そうと手を添えたが、杏寿郎さんは優しくその手に手を添えそれを拒否した。
「いいや。君が落ち着くまで俺もここにいる。君を1人で泣かせたりしない」
その言葉が堪らなく嬉しくて、私はモゾモゾと振り返り杏寿郎さんの胸に顔を埋めた。
落ち着きを取り戻し、涙もすっかり乾いたので、杏寿郎さんと私は教室へと戻る事にした。その間結局は、杏寿郎さんがいつものごとく私の腰を抱いてはいたが、校舎内に生徒の気配が全くない事がわかったので私は甘んじてそれを受け入れた。
「…何か甘い匂いがするな」
扉の前まで来ると、教室の中から外にまで漏れ出てくるほどの甘くて美味しそうな匂いが。
「何でしょうかね?さっきまではここまで甘い匂いはしなかった気がするんですけど」
杏寿郎さんと私は首を傾げながら扉を開き、中へと入る。
「あ、主役の2人がやっと戻ってきましたね。一体どこで何をしていたんです?」
「うむ!腹を下してしまってな!あまりにも痛かった故ナオに側にいてもらった!」
その言葉に、私は思わずパッと杏寿郎さんの顔を見上げる。パチリと目が合うと、杏寿郎さんはニコリと優しい笑みを私へと向けてくれた。
「もう少しまともな嘘がつけねェのかよ」
「わはは!やはりバレてしまったか!」
あからさまな嘘にみんな気がついているようだが、気を遣ってか深くは追求してこない。
「そんなことよりも!2人ともこっちに来て頂戴!」
そう言って蜜璃ちゃんが私の手を取り、ニコニコ笑いながら嬉しそうに教室の中央のほうへと引っ張って行く。杏寿郎さんの方を振り向くと、杏寿郎さんは杏寿郎さんで宇髄様に背中をぐいぐい押されていた。
「…この箱は?」
教室の中央に不自然に置かれている机の上には、大きめの白い箱がひとつ。その箱からはとても甘い匂いがし、先程廊下で感じた甘い香りの出どころだとすぐにわかった。
「はい、ナオちゃんはここね!」
そう言って箱の前に立たされる。