第11章 待ち侘びた日々
炭治郎くんのその様子に、私は自分があの日、炭治郎くんから逃げてそのままだった事を思い出す。
あんな酷い態度を取って…そのまま忘れていたなんて。
謝らなくてはと思い、私は炭治郎くんの方に駆け寄った。目の前に着き、私が謝罪の言葉を口にしようとすると
「すみませんでしたっ!」
と何故か先に炭治郎くんに謝られてしまう。
「え?どうして炭治郎くんが私に謝るの?謝られる事なんてひとつもないし、寧ろ謝らなきゃならないのは私なんだけど…」
その言葉に、炭治郎くんは下げていた頭を一度上げ
「いいえ。悪いのは俺です。何か事情があるのはわかっていたのに、俺はナオさんを無理矢理探し出すような真似をしてしまいました。本当にすみません」
と言って再び深く頭を下げる。
「お願いだから顔を上げて…炭治郎くんが謝る必要なんて少しもないの」
「ナオの言う通りだ」
そう言って、炭治郎くんと私の会話に割って入って来たのは杏寿郎さんだ。
「君にナオを探して欲しいと頼んだのは他でもない俺だ。君の鼻がとても効く事を良いことに、ナオの職場を探させたのも俺だ。竈門少年が謝る必要は全くない」
杏寿郎さんの言葉に、炭治郎くんはゆっくりとだがその顔を上げてくれる。私は炭治郎くんの手を取り、その目を見つめ
「謝罪なんていらない。その代わりにお礼を言わせて。炭治郎くんが杏寿郎さんを私の元に導いてくれたお陰で、今こうして杏寿郎さんと一緒にいられるの。じゃなければ私、きっとまだ逃げてるだけだった。だから…ありがとう。全部、炭治郎くんのお陰だよ」
と、少しでもこの気持ちが伝わるように願いを込めて言った。
「…ナオさん」
「うむ!俺からも改めて礼を言わせてもらおう!君のお陰で俺はようやくナオと夫婦になれた!心から感謝する!」
そう言って杏寿郎さんは炭治郎くんの頭にポンと手を置いた。
「ね?だから…そんな顔しないで?私はニコニコ笑ってる炭治郎くんの優しい顔が好きだな」
炭治郎くんを安心させようと言った私の言葉に、
「む!いくら恩人である竈門少年とてナオを譲ることは出来ない!ナオは俺だけの妻だ!」
と杏寿郎さんが言うものだから、私は思わず顔を顰めた。そんな私の顔を見て炭治郎くんはようやく笑顔を見せてくれたのだった。