第11章 待ち侘びた日々
"自惚れるな。お前の為じゃない"
"たまたま近くに用があっただけだ"
"甘露寺がお前もと言うから仕方なくだ"
けれども私は知っている。長期任務で煉獄家を離れている間、千寿郎さんに会いに来てくれていた事。槇寿郎様に私の様子を聞いていてくれた事。蜜璃ちゃんに私を誘ったらどうかと言っていてくれた事。伊黒様はかなり捻くれているように見えるけど、実はとても他人の事をよく見て気遣ってくれる人だ。
「…気色悪い顔でこっちを見るな」
緩みそうになる口元を我慢しながら伊黒様を見ていると、厳しいお言葉が飛んで来る。
「む!それは聞き捨てならない!ナオの顔はとても愛らしいぞ!」
「そうよ伊黒さん!ナオちゃんはとっても可愛いのよ!」
…誰か、この2人を止めてくれる人、いないかな。
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駐車場に到着してから教室に着くまでなぜこんなにも時間を要したのか。杏寿郎さんと私、そして伊黒様と蜜璃ちゃんの4人でようやく特別教室へと到着した。
ガラリと扉を見て開けた先には、懐かしい顔ぶれが沢山。
「お!主役がやっときたぜ。お前らあそこからここまで来るのにどんだけ時間がかかんだよ!待ちくたびれて派手に首が伸びちまう所だったぜ!」
「すまんな!」
どうやら早めに来たと思っていたのは勘違いだったようで、そこには今日来ると聞いていた全員が既に揃っていた。
「あっ!ナオさぁん!凄く会いたかったですぅ!」
「久しぶりだなメス虎!久々にこの伊之助様がツヤツヤのどんぐりをやろう!」
ダッと走り寄って来てくれたのは善逸くんと伊之助くんの2人だ。
「2人とも相変わらずだね。元気そうで良かった」
そう言って私よりも上にある2人の頭に手を伸ばし撫でると、善逸くんは"いやー!ナオさんに撫でられちゃった!いやー!"と懐かしい汚い高音で叫び、伊之助くんはホワホワと顔の周りに綿毛を飛ばしていた。
けれど、いつも一緒にいたはずのもう1人がいない。
「炭治郎ー?どうしたんだよ?炭治郎もこっちに来いよー」
「お前どうしたんだ?ギョロギョロ目ん玉に怒られんのが怖えぇのか?」
善逸くんと伊之助くんが声を掛けた方に目を向けると、炭治郎くんがじっと床を見つめていた。