第11章 待ち侘びた日々
そう言って今度は私の手を取った。
いや、それもどうなんだ。
とは思ったが、周りを見渡しても生徒がいる様子も、声が聞こえる様子もないのでまぁ良いかと思いそのままにした。
杏寿郎さんに手を引かれ学校内を歩いていると、なんだか学生になった様な気分になる。出来ることなら、杏寿郎さんと平和な学生生活を送ってみたかった。一緒に登校したり、放課後を過ごしたり。部活の大会に応援に行ったり。槇寿郎様や瑠火様が言っていた通り、さぞモテていた事だろう。
そんな事を考えていると、知らぬ間に手に力が入っていた様で
「どうかしたか?」
と杏寿郎さんが私の方を振り返っていた。
「いいえ。何でもありません」
「そうか!」
杏寿郎さんはまた、クルリと前を向き、ずんずんと進んで行く。
「こうして君と校内を歩いていると、なんだか君と2人でこの学園に通っている様な気分になるな!君の愛らしい制服姿を直接この目で見てみたかったものだ!」
若干私との考えに差異はあるものの、杏寿郎さんも自分と同じ様に思っていてくれたことが私はとても嬉しかった。
「…私も、同じ気持ちです」
そうニコリと微笑みかける私に、杏寿郎さんも優しい笑みを向けてくれた。
「こんなところで地味にイチャこいてるんじゃねぇよ。このバカップルが」
そう言って突如として背後に現れたのは
「宇髄!」
相変わらず顔に派手な化粧を施している宇髄様だ。
「宇髄様!」
「よう!久しぶりだな!相変わらず地味な面してやがる」
「お久しぶりです。宇髄様も変わらず元気そうで何よりです」
頭をわしゃわしゃと撫で回す宇髄様に、前世でも同じ様にされたなと懐かしい気持ちになった。
"寂しくなったらいつでも俺のところにでも遊びに来い。嫁の誰かしらが大体家にいるし、俺ももう現役は引退した身だ。お前の気晴らしに付き合う事くらい朝飯前だ!"
"うわ!ちょっと!犬みたいにわしゃわしゃしないで下さい!これから私は見回りがあるんです!宇髄様と違って忙しいんです!"
"はっ!お前も言うようになったじゃねぇか!"
杏寿郎さんとは少し違うけど、なんだかんだで面倒見が良くて、不死川様に叱られた時も私の味方をしてくれたお優しい方だった。
「宇髄!ナオから手を離せ!彼女は俺の妻だ!」
「…お前も本当に相変わらずだな」