第11章 待ち侘びた日々
「うむ!これで良いだろう」
心地の良い温風が止まり、ドライヤーの線をコンセントから抜いた杏寿郎さんがくるくるとその本体へと線を軽く巻き付ける。
「人に乾かしてもらうってこんなにも心地が良いものだったんですね。明日はぜひとも私に杏寿郎さんの髪を乾かさせてくださいね」
杏寿郎さんはキョトンと目を丸くした後
「楽しみにしている!」
とニコリと微笑んだ。
杏寿郎さんからドライヤーを受け取った私は、ドライヤーとヘアオイルを先程まで置いてあった場所に片づける。その間杏寿郎さんも、座卓に出しっぱなしにしてあった紙の束を、自身の仕事用の鞄へとしまっていた。
「そろそろ布団に入ろう」
そう言われ、時計を見ると時刻は11時ちょっと前。
「はい」
この時間に布団に入る…ということは、今日もするのかな?
そう思いながら、明日の着替えだけ準備をし、振り返ると杏寿郎さんがもう電気の紐に手を伸ばしていた。私は急いで布団の中に入る。チラリと私の様子を一度確認し、杏寿郎さんはカチッと電気を消した。
良かった。今日は消してくれた。
なんとなく恥ずかしくて背中を向けていると、杏寿郎さんの腕が私の身体へと絡みつき、ギュッと密着させられる。
やっぱりこの流れは…するのかも。
そう思ったものの、私を抱きしめるだけでそれ以上はしてくる様子がない。いつも、こうなると割とすぐその手が私の身体を弄り出すはず。どうしたのだろうかと考えていると、お尻の辺りに確かに感じる、杏寿郎さんの熱を帯びた"ソレ"の気配。
「……しないん…ですか…?」
恥ずかしいと思いながらも、自らそう尋ねる。すると杏寿郎さんは
「…したい。だが俺は今日、ナオを悲しませてしまった。故に、我慢するべきだと…そう思っている」
成る程そう言うことか。
モゾモゾと振り返り、杏寿郎さんと向き合う格好へと向きを変える。
「その話はもう済みましたよね?もう気にするのはやめて下さい。…それに…そんな風に杏寿郎さんに抱きしめられたら…私もしたくなってしまいます…」
そう言ってその温かい胸にすり寄ると、杏寿郎さんの身体がピクリと反応する。
「…良いのか?」
「…恥ずかしいので何度も聞かないで下さい…明日も仕事ですし、1回だけ…ですよ?」
私のその言葉に、杏寿郎さんはムクリ身体を起こし、私の上に覆いかぶさった。
