第11章 待ち侘びた日々
「え?杏寿郎さんが乾かしてくれるんですか?」
思わぬ提案に私は目を丸くして杏寿郎さんの顔を見る。
「うむ!採点の方はもう切りがついた故問題はない!」
そうニコニコと言う杏寿郎さんに、自分が杏寿郎さんに髪を乾かしてもらう姿を想像する。
…良いかも。
そう思った私は、立ち上がり、いそいそと先日持ってきた自分のドライヤーと、お気に入りのヘアオイルを持って杏寿郎さんの元へと再び戻る。
「これは何だ?」
オレンジ色のボトルを指差し、杏寿郎さんは尋ねる。
「これはヘアオイルと言ってドライヤーの熱から髪の毛を守ってくれるものです。私の髪、かなり猫っ毛で…これをつけると纏まりも良くなるし、なによりも良い香りで、とってもお勧めです!」
「そうか!ではそれも俺がつけてあげよう!」
「…じゃあ、お願いします」
ニコリと微笑み、杏寿郎さんはとても嬉しそうな顔で私が持ってきたドライヤーのコンセントを挿した。
「手を出してもらっても良いですか?」
「うむ!」
両方の掌を差し出した杏寿郎さんの手に、ヘアオイルをワンプッシュ出す。
「掌で伸ばして、私の髪の表面全体につけてもらえますか?」
「あいわかった!」
思った以上に優しい手つきでヘアオイルを塗る杏寿郎さんにおもわず笑みが溢れる。
「ぬり終えた!」
「ありがとうございます」
そう言いながら、先ほどまで髪を拭いていたタオルで杏寿郎の手に余ったオイルを拭き取ってあげる。
「すまない!では乾かしても良いか?」
「はい。お願いします」
カチッとドライヤーのスイッチが入り、温かい風が髪にかかる。その温風で、辺りにヘアオイルの香りがフワッと広がる。
「む!ナオからしていた良い香りの正体はこのヘアオイルと言うものだったのか!」
「ね!良い香りでしょう?この香りが好きでずっと使ってるんです。良かったら杏寿郎さんも使ってみてください」
「俺からこんな良い香りがしたら些か奇妙な気もするが、ナオが側にいる様で嬉しいかもしれん!早速明日かしてもらおう!」
杏寿郎さんのその言葉が嬉しくて、私は思わず振り返りその顔をニコリと見つめる。
「こら。乾かせないだろう。向こうを向きなさい」
と、"こら"と言いながらも優しく笑う杏寿郎さんに
「はぁい」
と、私は上機嫌で返事をした。