第11章 待ち侘びた日々
「失礼します。きのこの生姜風味パスタと激辛ペペロンチーノ、おもちしました」
今度は台車ではなく、お盆にパスタの入ったお皿を乗せ店員さんが部屋へとやって来た。
「あ、それでは生姜のパスタをこちらに、ペペロンチーノはそちらにお願いします」
と、しのぶさんがペペロンチーノを置くように示したのは、私の隣の空いている席だ。店員さんはパスタをテーブルに丁寧に置くと、"ごゆっくりどうぞ"と言って再び去って行った。辛そうな、けれどもニンニクの効いた良い匂いが横から流れて来る。
「わぁ!美味しそうですね!」
「あの…しのぶさん。こっちのパスタは…?しのぶさんが…食べるんですか?」
ならばせめて食べ終わってからまた追加した方が、温かい状態で食べれるのに。
「いいえ。私は辛い物がそこまで好きではないので」
「え?じゃあなんで頼んだんですか…?」
私のその問いに、ニッコリと微笑んだしのぶさんは
「そのパスタを食べるのは、私ではありません」
その時、再び個室の扉が開く。
「姉です」
「遅くなっちゃってごめんなさいねぇ。テストの採点に中々キリがつかなくてね。お料理冷めちゃったかしら?」
そこには、カナエさんの姿が。
「……うそ…」
私の口から出たその言葉は、あまりにも小さすぎて誰の耳にも入らなかったようだ。じわじわと目の奥から涙が込みあげて来て、私はそれ以上言葉を発することが出来ない。
「ちょうど今きたところですよ。間に合って良かったですね」
「あらそうなの」
「カナエさん、お疲れ様です!こんな時間まで大変ですね」
「テスト明けで少し立て込んでてね。普段はこんなに遅くならないのよ?」
そう言いながら、カナエさんは当たり前のように私の隣へと座った。カナエさんがこちらに顔を向け、目が合うと
「女子会、やっと出来るわね」
と私に微笑みかける。
「…っ!!!」
その笑顔を向けられた途端、私はもう涙を堪えることが出来なくなり、ボロボロと頬を大粒の涙が伝い落ちる。
「あらあら。そんなに泣かないで。もう、しのぶったらナオさんに私が来る事伝えてなかったの?」
カナエさんは私の涙をハンカチで優しく拭いながら、少し困った様子でしのぶさんに聞いた。
「驚かせようと思って黙っていたんです。でもまさかそんなに泣かれてしまうとは。…すみません」
