第11章 待ち侘びた日々
あの最後の戦いで生き残った柱は不死川様と冨岡様の2人だけだったと、槇寿郎様から聞いていた。それは即ち、蜜璃ちゃんと伊黒様もあの日に命を落としたと言う事を意味する。
2人はあの時、どんな最後を迎えたんだろうか。
側からみればお互いに好意を抱いてるのは明らかだったのに、柱という立場上、多忙すぎたのか、はたまた何らかの事情があったのかいつまで経ってもお付き合いには発展しなかった2人。私は外野がとやかく言う事ではないと見守る事しかしてこなかった。いや、そんなのはただの言い訳で、自分の事で手一杯過ぎて見て見ぬふりをしていただけなのかもしれない。蜜璃ちゃんが私にしてくれたように、私もその背中を押してあげる事が出来ていたら、2人はもっと別の形で2人の時間を過ごすことが出来たのではないか。そう考えると、胸がギュッと締め付けられるかのように苦しくなる。
でもきっと、蜜璃ちゃんは私がそう思う事を喜ばない。
変えようのない過去を悔やみ落ち込む事は、意味のない行為だ。今の私が出来ること、するべきなのは、今世ではきっと仲睦まじく過ごしている2人をお祝いしてあげる事だ。
私は自分の頬をパチンと両手で叩き、午後の業務が始まる前にモヤモヤに飲み込まれてしまいそうだった気持ちの切り替えを図る。
"わかりました。もし今日蜜璃ちゃんが会いに来てくれたら、帰りが遅くなるかもしれないので、その時はまた連絡します"
蜜璃ちゃんはきっと今日会いに来てくれるはず。そんな確信めいたものを感じながら、私は杏寿郎さんへとメッセージを送った。
「お先に失礼します」
「はいお疲れ様」
仕事の定時が過ぎて10分。片付けを終え、挨拶も早々に私は学校の外へ出る。蜜璃ちゃんが来ていないかと辺りを見回してみたが、残念ながらその姿を確認する事は出来ない。
‥そう都合良く来てくれるわけないか。
ガッカリと肩を落とした私は、駐車場へと足をすすめた(車ではなく自転車を貸して欲しいとお願いしたものの、杏寿郎さんに"ダメだ!"と言われ、仕方なしに今日から車通勤をさせてもらっている)。
歩いて2分もしない駐車場に到着し、乗ってきた杏寿郎さんの赤いSUVに目を向けると
「っナオちゃん!」
そこには蜜璃ちゃんの姿が。
「…っ!蜜璃ちゃん!!!」
蜜璃ちゃんが鞄を放り投げながらこっちに走ってくる。
