第2章 青から赤へ
煉獄さんに会ったのは今日でまだ2回目。きっとまだ知らないことばかり。それでも私はそのたった2回で"煉獄杏寿郎"という人間に惹かれた。もちろんそれはその人間性にであって愛だの恋だのそういうものとは違う。
この人と一緒に強くなりたい。
「‥煉獄さん。私本当は今日、稽古をつけてもらうのをお断りしようと思って来たんです」
だからきちんと自分の気持ちを伝えなくてはいけない。きっと煉獄さんは嘘が嫌いな人だと思うから。
「やはりそうか」
「え!?わかってて今日誘ったんですか?」
驚きすぎて手に持っていた湯呑みを危うく落としそうになった。
「うむ」
「‥じゃあ尚のこと‥なんで今日私に稽古をつけてくれたんですか?」
煉獄さんの意図がわからない。でもなんとか探ろうその猛禽類のような目をじっと見る。しばらく見つめ合う(いや睨み合うっていう方が正しいような)2人。
そのうちフッと煉獄さんが正面を向きようやく視線が外れる。勝った。と思う私は間違いなく本来の目的を忘れていた。
「そんなに見られると照れる!」
心なしか頬が赤く染まり声が大きくなっている煉獄さんに、急に私も恥ずかしくなってくる。
「すみません‥!ついムキになってしまって」
熱くなった頬を冷ますためにパタパタと手で仰ぐ。
「あの時君は迷っているような表情をしていた。迷うと言うことは稽古をしたい気持ちが少なくともあるという事だ。そして俺の見立てでは君はとても向上心のある人間だと思った。だから一度でも共に稽古をすればこっちのものだと思った!」
「え?じゃああの時、私の返事も聞かず稽古の約束があるって帰ったのは‥?」
「すまん!嘘だ!」
悪戯が成功した子どものようにニヤリと微笑むその表情に、ドキっと心臓が大きく波打つ。冷めたはずの熱が頬に戻る。
「‥煉獄さんも嘘をつくことがあるんですね」
胸の高鳴りを誤魔化すように出てきた言葉がこれだ。
「ははは!嘘も方便ってやつだな!どうしても君と共に稽古がしてみたくてな。そして俺は君の使う炎の呼吸が見たい!さて柏木、君にもう一度聞く。俺と共に稽古し、立派な剣士を目指さないか?」
もう断る理由なんてひとつも見つからない。姿勢を正し、身体を煉獄さんの方に向け頭を下げる。
「よろしくお願いします。私を煉獄さんの弟子にしてください」