第2章 青から赤へ
「すまない!君との稽古が楽しくてついやりすぎてしまった」
わはは。と笑う煉獄さんはやりすぎたと言う割には全然余裕そうで自分との実力の差を痛感する。
「‥いえ‥とても‥身になる‥稽古‥でした」
私の息が整うのはまだしばらくかかりそうだ。汗もグッショリで服が体に張り付き気持ち悪い。
「うむ!それは良かった!茶を持ってくるからそこでしばらく寝転んでいると良い」
そんな申し訳ない、と言いたい所だったが残念ながらクタクタ過ぎて煉獄さんを止められないし是非とも水分補給をさせて頂きたいのが本音だ。
煉獄さんがお茶を取りに去って行ったので、お言葉に甘え疲れ切った身体を転がし涼しい風に当たる。
「風が‥きもち良い‥」
葉っぱの揺れる優しい音が子守唄のように聞こえ、段々瞼が重くなり意識が遠のき始める。だめ‥もう寝てしまう‥。
「寝ているのか?」
完全に瞼が落ちかけた時、煉獄さんの端正な顔が私の視界に入り込んだ。
「‥‥っ!」
眠気は一瞬で飛んだ。
どうしよう。完全に眠りかけてたのを見られた。恥ずかしすぎる。顔から火が出そう‥。
「わはは。君は初めて顔を合わせた時もそんな表情をしていたな!」
「‥っそんな表情とは‥どんなのでしょうか‥?」
「目をまん丸にして驚いていたな!」
その通り過ぎてわはは、と笑う煉獄さんに対して何も言えず急いで起き上がり正座をする。驚いた時に目を丸くしてしまうのは私の昔からの悪い癖だ。
「そんなにかしこまる必要はない。弟の千寿郎におにぎりを握ってもらえるよう頼んだ。来るまで茶を飲みながら話でもしよう」
煉獄さんから差し出された湯呑みを受け取り「いただきます」と一口飲む。おいしいお茶が稽古で乾いた喉に染み渡る。煉獄さんは私の隣に座ると、同じように湯呑みに口をつける。
「さて、改めて俺との稽古はどうだったろうか?」
煉獄さんに聞かれ私は大事なことを思い出した。そう、私は煉獄さんに稽古をつけてもらうという提案を断ろうと決めて来たのだ。
「‥凄く厳しくて辛かったですが‥それ以上に楽しかったです」
私が抱いた嘘偽りのない気持ちだ。
「うむ!それは良かった。俺も誰かと共に稽古をするのが久々でな。腹が空くのも忘れて熱中してしまった」
断ると決めてきたはずなのに、私の気持ちは揺らいでいた。