第11章 待ち侘びた日々
段々とその手つきが怪しくなってきて、ただ私の胸を包み込んでいただけのその手が、やわやわと私の胸を揉み出す。
「ちょっ…っ揉むのはやめて下さい!」
「なぜだ?」
「…っなぜって…!」
そんなふうに触られたら、自然とそう言う気持ちになってしまうではないか。
私の胸を揉む手から逃れようと踠きながら、ふと、杏寿郎さんが帰宅する前に瑠火様と交わした会話が脳裏によぎる。
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「杏寿郎から聞いたのですが、日曜から木曜はこの家で過ごし、金曜の夜から日曜にかけてナオさんの借りているアパートで過ごすことにしたそうで」
「はい。その内週末2人で過ごす用の家を、こっちで探す予定ではあるのですが」
「折角の新婚なのに、ナオさんはそれでよろしいのですか?」
と、瑠火様は心なしか申し訳なさそうに私に問う。
「私はむしろ、ずっと煉獄家で良いと言ったんですが…杏寿郎さんが…どうしてもと…言うもので…」
何故私が、こんなにも歯切れの悪い返事になってしまっているか。それを説明するのには更に昨日まで時間を遡る必要がある。
それはアパートから煉獄家へ向かうまでに杏寿郎さんと私の間で交わされた会話だ。
「金曜の夜から日曜にかけては、ナオ1人で住んでいるアパートで2人きりで過ごそう!そして荷物を片付けながら、煉獄家に近いマンションでも借りて行く行くはそちらで週末を過ごそう!」
「え?でもそれではお金がもったいなくはありませんか?私は…煉獄家が好きなので、ずっとあの家に住み続けても構わないのですが」
私のその言葉に、
「皆が家にいると思うと君を思い切り抱だけないだろう」
と、当たり前のように、なんの躊躇もなく言いのけた杏寿郎さんに私は唖然とした。
まさかそんなしょうもない理由で、週末2人きりで過ごすための住まいを借りようとしているとは…口が裂けても言えない。いや、いっその事、瑠火様に正直に話して杏寿郎さんを止めてもらった方が良いのかもしれない。でもそんな事、恥ずかしすぎて言えるはずない。
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そんな経緯もあり、私は"煉獄家で過ごす日は行為をしない"とそう解釈をしていた。
けれども、そんな事を考えている私を置いてけぼりにし、いよいよ杏寿郎さんの指先が、私の胸の中心を弄り出す。