第10章 灯る灯火
「…っちょっと待って下さい!」
杏寿郎さんが私のその声に手を止める。
「今音柱様って言いましたか?音柱様も杏寿郎さんと同じ学校で教師をしているんですか?」
「うむ!他の柱もいるぞ!今度ナオにも会わせよう!…だが今は」
「…んぁっ!」
「こちらに集中だ」
止まっていた手が胸の飾りをキュッと摘み、油断していたせいか少し大きな声が出てしまった。そして再び、クニクニと私の胸を執拗に責め立てる。
「…ごめんなさい…あの‥んっ…でも…壁が‥あっ…薄いので…ふっ…昨日みたいに…っ…激しいのは…っだめ…ですよ…っ…?」
杏寿郎さんは私のその言葉に一度目をあさっての方向へ向け、再び私と目を合わせると
「善処する」
と、なんとも曖昧な返事が返ってきた。
「…あっ…んっ…待って…やぁ…」
「…ほら、声を抑えないと…隣に声が漏れてしまうぞ」
「…ふっ…杏寿郎さん…っん…あ…いじ…わる‥っ!」
「…なんとでも」
我慢はしたものの、あまり声を抑えられた自信はない。あとは隣人の不在を祈るしかなかった。
2個の避妊具を使い終わる頃には、私はもうヘロヘロで、荷物を詰めるどころの話ではなかった。ジロリと睨む私に"君が可愛過ぎるのが悪い!"と完全に開き直りの姿勢を取る杏寿郎さんに困った人だと思いながらも、何だかんだで求めてもらえるのが嬉しい自分がいたのだった。
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「ただいま戻りました!」
煉獄家に着いたのはちょうど4時を回った頃だった。
「おかえりなさい」
杏寿郎さんの声を聞きつけた瑠火様が玄関まで出迎えてくれる。
「母上、ただいま戻りました!早速で申し訳ないのですが、急ぎ頼みたいことがある故、父上を居間に呼んで貰っても良いでしょうか?」
「わかりました。すぐに呼んできますね」
そう言うや否や、瑠火様は踵を返し廊下の奥へと向かって行った。
「すみません!では、俺たちはこの荷物を運んでしまおう!」
「はい!」
服に化粧品、その他普段の使用頻度が高いものだけを選んで持ってきたので、キャリーケースとボストンバックに収まる量で済んでしまった。杏寿郎さんがその2つとも持ってくれているので(頑なに私にもたせてくれなかったので)、私はその後ろを着いて歩くように杏寿郎さんを追いかけた。