第10章 灯る灯火
「ここか」
来客用の駐車スペースに車を停めた。
「はい。2階のあの角部屋が、私の部屋です」
「セキュリティーの甘そうな建物だな…」
そう渋い顔をした杏寿郎さんが
「やはり俺は、この家で、君が1人暮らすことは許せない」
と神妙に言った。"父ですら許してくれたと言うのに、杏寿郎さんは本当に心配性だな"と、口に出したら絶対に小言を言われてしまいそうなので心の中で呟く。
「あの、少し片付けたいものもあるのでここで待っていてもらっても良いですか?」
「うむ!構わない!良いようであれば連絡をくれ」
と言って杏寿郎さんは自身の胸ポケットに入れられているスマートフォンを指でトントンと叩いた。
「ありがとうございます」
部屋に入り、部屋干ししていた下着を触るとそれはもう既に乾いていたのでケースにしまう。あと片付けるものといえば、今朝カフェラテを飲んでそのままにしてしまったマグカップ位だ。マグカップをシンクに移動し、杏寿郎さんに「来てもらって大丈夫ですよ」とメッセージを入れた。
そのうち
ピンポーンとインターホンが鳴り"はて?"と思いながら念のためと思い画面を覗くと、やはり杏寿郎さんの姿が。
玄関に向かいドアを開けると、ニコリと笑う杏寿郎さんの姿が。
「…なんでわざわざ…?」
と私が問うと
「うむ!君に出迎えてもらいたくてな!」
とニコニコ笑う杏寿郎さんが可愛いらしくて、「我が家にいらっしゃいませ」と私も微笑み返した。
「すみません。あまり人呼ぶ機会もなくて…その辺に適当に座っててもらっても良いですか?」
「うむ!ナオらしい落ち着いた部屋だな!」
そう言って杏寿郎さんは一瞬私がいつも使っている座椅子に腰掛けようとしたようだが、明らかに杏寿郎さんには小さすぎる。
「すまないがベッドに腰掛けても良いだろうか?」
「はい!遠慮なくどうぞ」
遅くなってはいけないと思い、私は杏寿郎さんと会話をしつつ旅行用のキャリーケースとボストンバックにいそいそと洋服や下着、化粧品等を詰めていく。
ふと、やけに杏寿郎さんが静かなことに気がつく。寝てしまったのかな?と思い振り返ると、杏寿郎さんはしっかりと起きていた。そしてその手には私の虎のぬいぐるみの姿が。
…っしまった!
ダッと走り、杏寿郎さんの手からその虎を奪い取る。