第10章 灯る灯火
食事を終え、車に乗り込み再び地図アプリを起動させる。行き先を煉獄家にしようと"住所を教えて下さい"とお願いした私に返ってきた返事は意外なものだった。
「次の行き先は君が一人暮らしをしているアパートだ!」
「え?私の…アパートですか?」
「うむ!移動している間に何を持っていくか考えておくと良い!」
話についていけない私の頭は疑問符でいっぱいだ。そんな私の様子に気づいた杏寿郎さんが
「君は昨晩、一人暮らしをしている家に帰るのが寂しいと言っていた。俺はもう君に、少したりともそんな思いをさせるつもりはない!そして俺自身、君と離れて暮らすことは考えられない!今日からまた煉獄家で共に暮すぞ!」
と殆ど決定事項のように言った。
ポカンと動かなくなってしまった私に杏寿郎さんが
「君に確認もせず勝手に決めてすまない…嫌だったろうか?」
と、眉を下げ不安そうに私を見る。
今日から毎日杏寿郎さんと共に、あの家で過ごすことができる。もう1人寂しくぬいぐるみを抱いて眠らなくても良いんだ。
「…嬉しいに、決まってるじゃないですかっ!!!」
あまりにも嬉しい私は、運転席に腰掛ける杏寿郎さんにギュッと抱きついた。
するとその私の反応が予想外だったのか、杏寿郎さんの身体が傾き、ゴンッ!と音を立て、運転席側の窓に頭が激突する。
「…っ!すみません!つい嬉しくて…大丈夫ですか?」
杏寿郎さんから身体を少し離し、コブができてはいないかと確認する為にサワサワとその後頭部を撫でる。すると、ぎゅっと杏寿郎さんの手が私の頬を包んだかと思うと
ちぅ
っと口付けられる。
そしてその唇は
ちゅっ‥ちゅぅ‥
と何度もくっ付いては離れを繰り返し、中々解放してもらえない。しかしここは2人きりの部屋ではない。人気ラーメン屋さんの駐車場で、外には人の気配もする。
「…杏寿郎さん…っ…人に‥見られてしまいます…!」
私の抗議を聞き入れてくれた杏寿郎さんがゆっくりと離れていく。
「すまない。嬉しくて‥つい我慢が利かなかった!」
と、照れて笑う杏寿郎さんに私の胸が"キュン"と音を立て高鳴ったのは言うまでもない。