第10章 灯る灯火
走り出してしばらく経つと、杏寿郎さんは日差しが眩しかったのか、サイドボードからサングラスを取り出した。カチャリとそれをかけた杏寿郎さんの姿に
素敵!格好良すぎる!写真撮りたい!
と私の胸は大騒ぎ。
そんな私の視線に気がついた杏寿郎さんが
「そんなに見られると穴が空いてしまう」
とニヤリと微笑むものだから私の頬は急激に熱を帯び、首あたりまで真っ赤になっていたと思われる。私はその恥ずかしさを誤魔化すため、鞄から昨晩コンビニで買っておいたコーヒーを取り出し、ストローをプスリと刺すと杏寿郎さんへと渡した。
「丁度何か飲みたいと思っていたところだ!やはりナオはよく気がつくな!」
杏寿郎さんとのドライブは楽しくて、あっという間に私の実家へと到着してしまった。
「初めまして!煉獄杏寿郎と申します!」
結論から言えば、父も母も杏寿郎さんと私の結婚を認め、喜んでくれた。
杏寿郎さんの顔を見た母は、一瞬目を見開き驚いていたが、すぐに「こんな素敵な男性がナオのお相手だなんて…!」ととても興奮し喜んでいるようだった。父はと言えば、やはり最初は警戒心を露わにしていたが、杏寿郎さんが持参したA4の茶封筒から取り出した履歴書やら大学の卒業証明書やら教員免許状を見ると"いや…就職試験じゃないんだから"とあっけに取られた後笑った。私もまさかそんなものを持ってきていたとは露知らず、なんとも杏寿郎さんらしいなと1人心の中で呟いた。
「俺はナオさんの事を心より愛しております。必ずや幸せにすると誓います。どうかナオさんとの結婚をお認め頂けないでしょうか」
一瞬も目を逸らすことなくそう言う杏寿郎さんに
「君のように、誠実さ溢れる人間に私は会ったことがない。…娘を、どうか頼みます」
と父は静かに言った。
「ありがとうございます!」
杏寿郎さんは再びA4の茶封筒を取り出す。今度は一体何を取り出すのだろうかとみていると、
「お父上にどうしても書いていただきたいものがあります」
そう言って取り出したのはまだ何も記入されていない婚姻届だった。
「…杏寿郎さん…いつの間に…っ!」
「昨日、君を駅に迎えに行く前にもらってきた!お父上にどうしても保証人の欄を記入していただきたくてな!…お願いしても良いでしょうか?」