第10章 灯る灯火
瑠火様が作ってくれた美味しい朝食を頂き、昨夜洗濯と乾燥までかけてもらったワンピースに着替える。"結婚の挨拶に伺うのに正装でなければ失礼だ!"とスーツに着替えようとする杏寿郎さんに"父が緊張してしまうのでやめてほしい"とお願いしたのがつい先程のこと。杏寿郎さんはあまり納得していないようだったが、結局こ綺麗なシャツとスラックスという格好に落ち着いた。
「いって参ります!」
「杏寿郎、くれぐれもナオさんのご両親によろしくお伝えするように頼みましたよ」
「あいわかりました!」
「兄上、ナオさん、いってらっしゃい」
「行ってきます、千寿郎さん」
槇寿郎様、瑠火様、千寿郎さんに見送られ、杏寿郎さんと私は柏木家へと出発した。
「え?車で行くんですか?」
「うむ!車だ!」
てっきり電車で向かうと思っていた。庭に車が停めてある様子はなかったので、私を勝手に煉獄家は車を持っていないのだと思っていた。
「…杏寿郎さんが免許を持っていること自体、ちょっと意外です」
「失礼だな!俺もいい大人だ!免許くらい持っている」
100メートル程歩き、到着した駐車場を見ると、そこには赤いSUVタイプの車が1台あった。
「あれが杏寿郎さんの車ですか?」
「うむ!全て真っ赤なのは些か派手すぎると断ったのだが、この車が1番似合うと押し切られてしまってな!」
「私も同じ意見です!とってと杏寿郎さんにピッタリな車だと思います!」
私のその言葉に杏寿郎さんは
「そうか!」
と嬉しそうにニコリと笑った。
杏寿郎さんは助手席のドアを開けると「座ると良い」と、私を優しくエスコートしてくれ、席に乗り込むとドアまで閉めてくれた。
こんな風に甘やかされていたらダメになってしまいそう。
なんて思いながらも、杏寿郎さんに特別扱いしてもらえるのがとても嬉しくて、その甘やかしを受け入れてしまう自分がいるのが現状だ。
杏寿郎さんは運転席に乗り込み、シートベルトを装着する。
スマートフォンの地図アプリを起動し、実家の住所を検索すると、ここから約2時間程度で到着する見込みだ。
「結構時間が掛かりますね。運転疲れたら変わりますので遠慮なく言ってくださいね。…あ、でも保険の関係でダメですかね?」
「2時間程度な問題ない!では出発だ!」