第10章 灯る灯火
「槇寿郎様、瑠火様…おやすみなさいませ」
ペコリと頭を下げる私に
「おやすみなさいナオさん」と瑠火さまが、「あぁ」と槇寿郎様が返事を返してくれる。
「杏寿郎」
出て行こうとする杏寿郎さんを瑠火様が呼び止めた。
「わかっていると思いますが…」
そう言って瑠火様は、目線だけをチラリと千寿郎さんへと向けた。
「…わかっております!」
杏寿郎さんはそう返事をしていたが、私には瑠火様が意図している事がよくわからなかった。
洗面所に連れて行かれ、軽く口をすすぎ、その後連れてこられたのは杏寿郎さんの部屋だった。その部屋も、前世で2人で過ごした部屋とほとんど変わらず私は喜びを噛み締めていた。
「この部屋も…すごく懐かしい」
そう言ってくるくると部屋を見回している間に杏寿郎さんが布団を敷いてくれたようで、ヒョイっと抱き上げられ布団へと連れて行かれる。
「ほら、布団に入りなさい」
コロンとその上に寝かされる。
「ふふっ。杏寿郎さん…優しい」
杏寿郎さんの首に腕を回し、グイッと自分の元へ引き寄せ寄せた。
「…?…杏寿郎さん…?」
けれども杏寿郎さんはグッと腕を伸ばし、それを許してくれない。
「…嫌…ですか…?」
不安になり私がそう聞くと、
「そうじゃない。だが…先程母上に釘を刺されてしまったからな」
と言った杏寿郎さんに、"成る程そう言うことか"と先ほど瑠火様が意図した事をようやく理解した。
「…キスだけ…キスだけでいいので…だめですか…?」
甘えて言う私に、杏寿郎さんが動揺し、一瞬腕の力が抜けたのを私は見逃さなかった。
グッとその首を引き寄せ
ちぅっ…ちゅ…
と杏寿郎さんの唇を何度も奪う。
薄目で杏寿郎さんの様子を伺うと、眉間に皺を寄せ何かに耐えるような顔をしていた。その表情がなんとも魅惑的で、私はもっとそんな表情が見たくて、杏寿郎さんの口内へと自ら舌を差し込んだ。
杏寿郎さんが驚き目を見開く。
ちゅぅ…くちゅぅ…
としばらく好き勝手に杏寿郎さんの口内を堪能していたが、
「…っん…ふぅ…っ」
といつの間にか杏寿郎さんの舌に翻弄されていた。
ちぅっと音を立て、杏寿郎さんの唇が離れて行く。
杏寿郎さんは欲が見え隠れする瞳で
「…君は、相変わらず俺を煽るのが上手いな」
と困ったように笑った。