第10章 灯る灯火
私は思わず槇寿郎様に抱きつく。
「‥っおい!離しな「ごめんなさいっ!」‥っ!」
槇寿郎様は驚き、一度は私の手を解こうと腕を伸ばして来たが、私の身体が震えていることに気がつくとその手を元の場所とへ引っ込めた。
「…帰ると言ったのに‥千寿郎さんとも‥っ約束したのに‥お二人の元に…帰ることが出来ませんでした‥!‥本当にごめんなさい‥っ」
そう言ってグズグズと泣く私の背中を、いつかの様にその手が優しく撫でる。
「…謝る必要はない。お前があの時必死で戦っていたのを俺は知っている。よく戻って来てくれた」
槇寿郎様のその温かい言葉に、私の涙腺はダムが決壊したかのように涙が止まらなくなった。
「…っ折角お化粧直したのに…またぐずれちゃうじゃないですかぁ‥っ!」
そうして私はしばらくの間泣き続けた。
そしてようやく涙も止まり落ち着いた頃、
「そろそろ良いだろう!」
とグイッと杏寿郎さんに引っ張られ、槇寿郎様から引き剥がされたのだった。そんな私たち3人の様子を、瑠火様と千寿郎さんがクスクスと笑いながら見ており、なんとも恥ずかしい気持ちになったのは言うまでもない。
テーブルを挟んで正面に、槇寿郎様、瑠火様、そして千寿郎さんが座っている。その反対側にに杏寿郎さんと私は並んで座った。
「父上、母上、千寿郎。今日は俺の為に時間を作ってくれたこと、心より感謝します」
そう言って頭を下げる杏寿郎さんに習い私も頭を下げる。
「先程俺はナオに求婚し、彼女もそれを承諾してくれました。俺は今度こそナオを名実ともに妻に迎える為、すぐにでも婚姻の手続きを進めたいとと思っております」
杏寿郎さんのその言葉に、千寿郎さんはパッと目を輝かせとても喜んでいてくれるようだった。けれど、槇寿郎様は違った。槇寿郎様は神妙な表情で杏寿郎さんと私を見ている。
「…俺たちは全くもって構わない。君が煉獄の家に来てくれるのをとても喜ばしくすら思う。だがしかし、柏木のご両親はどうだろうか?急に現れた、自分達がよく知りもしない相手と娘が結婚すると聞けば、普通の感覚を持つ親であれば間違いなく反対するんじゃないか?」
「…確かに父上の言う通りやもしれん」
そう言う2人の会話に私は
「たぶん…大丈夫だと思います」
と割って入った。