第10章 灯る灯火
私の目をじっと見て真剣にそういう杏寿郎さんがなんだかとってもおかしくて、私の口角が思わず上がる。
「こら。人が真剣に話しているのに、何を笑っている」
「すみません。つい」
そう言って怒られたことを誤魔化すようにギュッと杏寿郎さんに抱きつくと、杏寿郎さんも優しく私を抱き返してくれた。
「‥ナオ、君に頼みたいことがある」
杏寿郎さんのその言葉に、私が顔を上げると、優しく私を見下ろしているその瞳と目が合った。
「何でしょう?杏寿郎さんの頼みであれば私は喜んで聞きますよ」
そう言ってニコリと微笑みかける。
「‥明日、いや正確には今日だが仕事は休みだろうか?」
「はい。たまに土曜日に仕事がある時もありますが、明日はお休みです」
「そうか!ではナオ、煉獄家に‥来てはくれないだろうか?」
"煉獄家に行く"。それは即ち槇寿郎様、そして瑠火様と会うと言うことだ。槇寿郎様はともかく、瑠火様はお会いするのはもちろん初めてで、緊張とそしてどんな風にご挨拶したら良いかと心配な部分もあった。それでも私は
「もちろんです。喜んでお伺いさせてもらいます」
そう答えた。
「そうか!ありがとう!そうと決まれば電車が動くまでまた一眠りするとしよう」
杏寿郎さんはそういうと、私を抱きしめたままゴロンと寝転がり布団を被る。
「‥杏寿郎さん」
「うむ!なんだ」
「‥会いに来てくれて、ありがとう」
そう言ってその温かい胸に擦り寄ると、杏寿郎さんは私の背中を優しく撫でる。
「‥当然だ。俺の方こそ、また俺の元へ戻って来てくれた君に心からお礼を言いたい。‥ありがとう」
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駅まで送ってくれた杏寿郎さんと別れ、私はようやく家に辿り着いた。昨夜の行為の名残で、身体が重くなんだか動きにくい。シティホテルでシャワーを浴びては来たが、念のためともう一度シャワーを浴びる。
浴室から出て、体を拭き下着をつけ、髪を乾かし、キャミソールだけの姿でクローゼットへと足を進め、そこから綺麗めのワンピースを取り出し袖を通した。鏡の前に行き、自分の姿を確認する。
うん。大丈夫。
愛する人のご両親に会うのに恥ずかしくない格好だと我ながら思えた。
煉獄家にお邪魔するのであれば手土産も必要なので、私は少し早いが家を出発し、近所にある和菓子屋さんへ向かった。