第10章 灯る灯火
「‥‥っもう‥だめ‥っ」
「‥ナオ‥っ!」
結局私は今世始めての行為にも関わらず、何度も気をやってしまい最後には気絶するように眠りに落ちた。
目が覚めると、未だに服を着ていない杏寿郎さんが(私も裸のままだったが)穏やかな顔でスヤスヤと眠っていた。その少し幼く見える寝顔が堪らなく愛おしくて、私はその胸に擦り寄る。するとパチリと杏寿郎さんの目が開いた。
「すみません。起こしてしまいましたか?」
「いや構わない。今何時だ?」
そう言えば、部屋に入ってから時計を一度も見ておらず場所すら把握していなかった。私はクルリと室内を見渡し時計を探す。
「えっと‥まだ2時ですね」
その私の言葉に杏寿郎さんはガバリと起き上がり
「よもやっ!‥2時だと?」
と信じられないと言いたげに頭を抱えている。
私はと言えば捲れてしまった布団を手繰り寄せ、今更と思いながらも外気にさらされてしまった胸を必死で隠していた。
「まさかそんなにも眠りこけてしまうとは‥!」
杏寿郎さんはグリンと私の方を向き
「君の家に帰りが遅くなると連絡はしてあるのだろうか!?よもや君の両親の許可なしにこんなにも日付を跨ぐまで君を拘束してしまうとは‥っ!」
と慌てた様子で問うて来る。
なんだそんな事か。
「私今一人暮らしをしているので、何の心配もありませんよ」
そうニコリと笑って答えた私に杏寿郎さんは
「‥一人暮らし?」
と目を見開き私の顔をじっと見る。
「はい。社会人になってからずっと一人で暮らしています」
「‥だめだっ!!!」
杏寿郎さんはぬくぬくと布団に包まり転がっていた私の腕を掴み、身体を起こすとガシッと肩を掴む。
「‥ダメって‥何がですか?」
杏寿郎さんの言っている意味が理解できず、私の頭は疑問符で埋め尽くされる。
「こんな可憐で、か弱いナオが一人で暮らしているなんて‥危険すぎる!今すぐ俺の元へ引っ越してくるんだ!」
可憐でか弱い。
いったい杏寿郎さんに私はどう映っているのか。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。駅まで近いし、勤務先まで4駅しか離れていませんから」
「だめだ!ナオが仕事を終え帰る時間にはもう暗くなる。痴漢に酔っ払い、タチの悪いナンパ!俺は君がそんな危険に晒されるのを耐えられない!」