第10章 灯る灯火
振り返ったその先には、予想していた通り炭治郎くんがおり私をじっと見ていた。この地域に鬼殺隊にゆかりのある人達が集まっているという話はやはり本当だった。必死に探していた時には誰にも会えなかったのに、会いたくない時に限って会ってしまう。
「‥違います。人違いではありませんか?」
咄嗟に嘘をついてしまう。けれども炭治郎くんは私から目を逸らすことなく
「どうして嘘をつくんですか?‥ナオさんから嘘の匂いがします」
と言った。
そうだ。炭治郎くんは人よりも鼻が良かったんだ。
それを思い出した時にはもう手遅れで、私は動揺を隠す為に俯き地面に目線を落とす。
「ナオさん‥「炭治郎ー!」」
何かを聞こうとした炭治郎くんだが、自分の名を呼ぶ声に気を取られ私の肩を掴む手が緩む。私はその隙に、バッとその手を振り払い駅へと走った。
後ろからは「ナオさん!」と呼び止める声が聞こえたが、追ってこないことを良いことに私はその声を無視し、走り続けた。
駅構内に入り振り向いても炭治郎くんが現れる様子はない。
良かった…追って来てない。
私はほっと溜息をつき、電車が来るホームへと足を進める。昨日とは違いまだ電車は来ておらず、私は白線の前に並び電車が来るのを待とうとしていた。
その時、今度は突然パシリと腕を捕まれる。
「…っ!」
驚き振り向くとそこには千寿郎さんの姿が。
しまった。まさかここで待っているとは思わなかった。
振り払い逃げようとしたその時
「っお願いです!逃げないでください!…もう僕を、置いていかないでください…っ」
その言葉は前世の私に言った言葉なのか、それとも今世の私に言った言葉なのか。
千寿郎さんは涙を流しながらも絶対に離さないと言わんばかりに私の腕を両手でギュッと掴む。
「…っごめんなさい…」
これ以上千寿郎さんを泣かせることなんてできない。
私は手を振り払うことをやめた。
駅のホームでスーツ姿の20歳を超えているであろう女と、中学生位の男の子が一緒に泣いている光景は非常に目立つ。下手をしたら私が通報されかねない。私と千寿郎さんは一旦駅を出て、近くにある公園へと場所を移動した。