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暖かく和やかに【鬼滅の刃】【煉獄さん】

第10章 灯る灯火


家に帰り、靴を脱ぎ捨て着替えもせずにベッドへと飛び込む。その衝撃で虎のぬいぐるみがコロリと下へと転げ落ちて行った。いつもだったらすぐに拾うそれを、今はどうしても拾う気になれない。

なんで?
どうして?
約束したのに。
ずっと探していたのに。

ただただ震える手で自分を抱きしめ泣くことしかできない。結局私はベッドの下へと手を伸ばし、杏寿郎さんにそっくりな虎のぬいぐるみを抱きしめ自分の心を落ち着かせようとしてしまう。こんな時ですらこの虎のぬいぐるみに縋ってしまうとは、自分でも馬鹿だなと思う。






泣きつかれそのまま明け方まで眠ってしまい、起きてからノロノロとシャワーを浴び、目を冷やすことで腫れた瞼をなんとか化粧で誤魔化せるほどにはなった。社会人とは難儀なもので、どうしようもなく落ち込んでいたとしても仕事には行かなくてはならない。いや、もし異動前であれば"急な体調不良"という裏技で休むことも可能だったかもしれないが、異動したてで流石にそうするのは憚れた。




「‥柏木さん、瞼が腫れてるみたいだけどなにかあった?」

そう私に聞いて来たのは、異動してくる前から合同会議で顔を合わせる機会が多くあった、ちょっと変わっているけど気さくで優しい女性の先輩。

「‥ちょっと映画をみて泣きすぎてしまって‥」

我ながら下手な言い訳だなとは思ったが、私の様子に何かを察してくれたのか先輩はそれ以上聞いてくることはなかった。

「まぁそれなら良いけど、何かあったらちゃんと言いなさいよ!」

「‥はい。ありがとうございます」

その押し付けがましくない優しさが、今の私にはとても嬉しかった。





何とか1日の仕事を終え、私は千寿郎さんが待っていたらどうしようと不安な気持ちを抱えながら駅の前まで到着した。タクシーを使う選択肢もなくはないが、残念ながら一人暮らしの私にタクシーを使って帰るほどの金銭的余裕はなく電車という手段を選ばざるを得ない。恐る恐る駅構内に入り、辺りを見回したが千寿郎さんがいる様子はない。

‥良かった。

そう安心していたその時、

「すみません。もしかして‥ナオさんじゃありませんか?」

と肩を掴まれる。

その声はよく知っている声で、振り向きたくないと思った。けれども肩を掴まれてる以上振り向かざるを得ず私はゆっくりと振り返る。
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