第2章 青から赤へ
鬼狩りの名家産まれで、炎の呼吸の使い手である煉獄さんにとって赤色の刀を持ちながら水の呼吸を使っている私は許し難い存在なのかもしれない。きっと彼は私を叱責するために来たんだ。
「‥申し訳ありません」
もちろん私だって炎の呼吸を習得するべきだとは思っていた。でも炎の呼吸の使い手と同じ任務になる機会は今までになかったし、呼吸を換えることに時間を費やして鬼を探す時間が取れなくなってしまう事がどうしても嫌だった。いやこれもただの言い訳だ。するべき事をしなかった結果階級も中々上がらなくなり、仇の鬼も結果的には首を切ることが出来たが此方がやられていた可能性も十分あった。自分の情けなさにまた目頭が熱くなってくる。
「何を謝る必要があるんだ?俺は別に君を叱りに来たわけじゃない」
「え?違うんですか?」
俯いていた顔を上げ、煉獄さんの方を見るとジっとこちらを見ているが確かに怒っている様子はない。
「俺はただ自分の見た事が見間違いでないことを確認したかっただけだ」
「‥そうですか」
私の考えがただの早とちりだとわかり全身に入っていた力がフっと抜ける。
「差しつかなければ君が水の呼吸を使い続ける理由を聞いても良いだろうか?」
一瞬返事に迷った。水の呼吸を使い続けた理由を話すと言うことは、私が鬼殺隊に入隊するに至った経緯を話す必要が多少なりとも出てきてしまう。初対面の煉獄さんにそれを話すのは憚れる気もしたが自分の命を救ってもらった相手だ。
「‥少し長くなってしまうのですが良いですか?」
「うむ!問題ない」
私は鬼に姉と慕う人を殺されたこと、そこで会った隊士に育手を紹介してもらったこと、任務のない日は鬼の情報収集をしていたこと、そしてその鬼がつい先日頸を切ったあの鬼であることを話した。
「鬼の情報収集はもう必要ありません。これからはその時間を別のことに使えます。その第一歩がこの本ってわけです」
私は傍に置いてあった本を拾いその表紙を煉獄さんに見せる。
「成る程。そのような経緯があったのだな。辛い話をさせて申し訳ない」
「もう済んだことです。これからは敵討ちのためじゃなく、苦しんでいる誰かのために剣を振るいます。ハナエさんもきっとそれを望んでるはずです」
煉獄さんと話す事で自分の中にあった迷いはなくなっていた。これからもっと鍛えて、知識をつけて、強くなろう。
