第9章 火が灯るその日まで
「‥柏木さん‥っ!‥柏木さん‥っ」
私を泣きそうな声で呼ぶ女性の声に意識が浮上する。
うっすらと目を開けると、そこには見たことのある目元。
「‥あれ?あなた‥確か‥」
そうだ。あの杏寿郎さんの口付け事件の時の隠の子だ。
「‥っ!柏木さん!目が覚めたんですね!今‥すぐに医療班が来ます!」
「‥無事で良かった‥」
「‥っ喋らなくて良いですから!‥呼吸を‥止血を‥」
残念ながらもう身体の痛みも感じないし、意識がふわふわしてすぐにでもまた意識を手放しそうだ。きっとそうなったら、私は2度と目が覚めないだろう。
「お願いが‥あるの‥」
「‥っ喋ったら‥ダメです!」
「‥ごめんね‥最後だから‥聞いて‥」
「‥っ!!!!」
彼女が息をのんだのがはっきりわかった。
「‥‥千寿郎さんに‥これ‥渡して‥欲しいの‥」
腕はもう上がらない。唯一まだ動いてくれる指を少し動かし、まだ手元にある短刀の存在を彼女に示す。
「‥‥杏寿郎さんと私‥ずっと見守ってると‥約束‥守れなくて‥ごめんねと‥伝えて‥」
「‥諦めないで‥死なないで下さい‥っ!」
「‥ごめんねもう‥疲れちゃった‥」
そう力無く笑う私に、彼女は私がもう死を受け入れている事を悟ってくれたのか、短刀を受け取り懐へとしまった。
「‥槇寿郎様には‥‥玖ノ型‥撃てましたと‥稽古‥ありがとう‥と‥伝えてください‥」
「はい!必ず!必ず伝えます!」
そう泣きながら言う彼女に私は何とか微笑みかけ
「最後にお願い‥。生まれ変わったら‥私と‥友達に‥なって‥くれないかな‥?」
そうお願いした。
「‥‥っはい!‥喜んで‥っ!」
彼女は泣きながら笑っていた。
「‥っふふ‥‥ありがとう‥。それじゃあ‥もう‥‥眠るね‥」
「‥っ柏木さん‥おやすみなさい‥。煉獄様と‥お幸せに」
気づくと、母と最後にみた夕日のように暖かい場所に立っていた。ボロボロになった身体も、服もみんな元通りになっている。
「ナオ」
「っ杏寿郎さん!」
愛しい人の声に振り向くと、そこには炎柱の羽織を羽織る杏寿郎さんが立っていて迷わずその胸に飛び込む。
「杏寿郎さん!杏寿郎さん!」
「ナオ‥良く頑張った」
ギュッとお互いの存在を確かめるように抱き合う。